ガザ空爆でイスラム聖戦幹部含め武装勢力150人死亡か 2021.5.18

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ハマス・イスラム聖戦幹部150人以上死亡か

ハッサム・アブ・ハビード

イスラエル軍は、17日のガザへの空爆で、10−12のロケット弾発射地他、新たにメトロ(地下鉄という意味)と呼ばれる地下トンネル15メートルを破壊。この攻撃で、イスラム聖戦のベテラン幹部ハッサム・アブ・ハビードが死亡したと発表した。

ハビードは、過去15年間、ガザ北部からイスラエルへの攻撃を指揮していたという。先週、ガザからの砲撃でイスラエル兵一人が死亡した件にも関わっていたとみられる。

イスラエルは、このようにハマスやイスラム聖戦の幹部のピンポイント攻撃を続けており、IDF報道官によると、これまでにハマス戦闘員125−130人、イスラム聖戦戦闘員30人が死亡したとイスラエル軍はみている。

一方、ガザ保健省の報告によると、これまでにガザで死亡したパレスチナ人は子供61人、女性35人を含む213人である。もしイスラエル軍の推測が正しいとすれば、子供は別として、死者のほとんどは、武装勢力ということになる。

www.jpost.com/breaking-news/idf-ships-eliminate-targets-off-coast-of-gaza-strip-report-668385

www.timesofisrael.com/idf-says-it-killed-senior-islamic-jihad-commander-in-airstrike/

空爆で地下トンネルを使ってハマス幹部を追跡・暗殺:イスラエル軍南方総司令官

イスラエルは、ハイテクを駆使して、ハマス幹部のいどころをキャッチするだけでなく、ピンポイントで限定的な攻撃を行なっている。そのためか、これまでのガザとの戦闘と違って、市民の犠牲者がニュースに出てくることが格段に少なくなっている。

昨夜イスラエルが行った攻撃は、戦闘機60機が100発の爆弾で、65箇所への攻撃を約30分で終えている。この攻撃で、ガザの地下トンネル15メートルを破壊したとのこと。イスラエル軍は、ハマスの地下トンネルの位置とその経路を完全に把握しているということである。

イスラエル軍南方部隊エリエゼル・トレダノ司令官

イスラエル軍南方部隊エリエゼル・トレダノ司令官は、ガザでの作戦「壁の護衛作戦」について、次のようにまとめた。

①最初の数日は、ガザの武力を破壊するとともに、イスラエルに侵入しようとしていた武装勢力をトンネルの中にいる間に攻撃した。②トンネルで繋がる多くの拠点を破壊するとともに、ハマス幹部を暗殺する。言い換えれば、ハマスのトンネルを使って、ハマスを内部から攻撃するという手段である。

先週、メディアが入っていたビルを崩壊させて、国際社会から大きな非難を受けたが、このビルは、トンネルの経路上にあり、メディアのオフィスの階下にハマスの諜報司令部があったとトレダノ少佐は語る。同様にトンネルは、多くの市民の家屋の下を通っているのだという。

イスラエルが目下、追跡している幹部としてトレダノ少佐があげたのは、ハマスのムハンマド・デイフとアヒヤ・シンワル。停戦の声があがっていることについて、軍にとっては時間があればあるほど有利だと語っている。

作戦を堂々とメディアに明らかにしていること、イスラエルの軍事力は、その力量だけでなく、ハイテク度も相当高いということを見せつけている。これにより、ハマスだけでなく、ヒズボラやイラン、敵対する全ての勢力にその威力を見せつけて、将来のイスラエルへの攻撃を思いとどまるよう、暗黙のメッセージを伝えているということである。

www.timesofisrael.com/top-general-says-idf-will-continue-to-try-kill-hamas-senior-leaders/

ガザからの水中ドローン攻撃を阻止

イスラエル軍によると、ハマスが放った水中ドローンが、イスラエルに接近してきたため、海軍がこれを破壊した。ハマスは、アシュケロンから23キロ沖のタマル油田(天然ガス油田)施設を破壊すると脅迫している。このため、現在、タマル油田は閉鎖されている。

ハマスの攻撃は多岐にわたっているということである。

www.timesofisrael.com/idf-says-it-thwarted-underwater-drone-attack-by-hamas-from-northern-gaza/

ガザからの反撃:イスラエル南部へ90発

昨日、ガザからの攻撃は約6時間止まっていた。しかし、夜7時から朝7時まで、イスラエル南部に90発のロケット弾を発射した。このうち、20発は、ガザ内部に着弾。

イスラエルに到達したもので、空き地に着弾しそうなもの以外の大部分はアイアンドームが撃墜している。住民たちはシェルターで過ごしており、今回は大きな被害は報告されていない。ハマスはテルアビブを攻撃すると言っていたのだが、イスラエル南部への攻撃になっていたことが注目されている。

*ハマスのロケット弾より高いアイアンドーム迎撃ミサイルの値段

ハマスはこれまでに、1万4000発のロケット弾を発射している。このうち、高価な長距離ミサイルは、数百発にとどまるとみられている。調べによると、使われいるほとんどのロケット弾は、一発300から800ドル(4−9万円)だという。そろそろ、ロケット弾の数や経済にも限界が来ていることが期待されている。

一方、イスラエルのアイアンドームは、一基5万から10万ドル(600万から1,100万円)もしており、ハマスよりはるかに多くの出費をしいられていることはよく知られた事実である。

ガザへ人道支援物資搬送再開?

国際社会から停戦への圧力とともに、イスラエル軍の優勢が出始めただろうか。イスラエルは18日から、ガザへの人道支援物資を搬入するカレン・ショムロン検問所を再開する。検問所は、9日以来、閉鎖されていた。

www.jpost.com/breaking-news/kerem-shalom-crossing-to-open-for-humanitarian-aid-668377

こうしてみると、そろそろハマスに限界が来始めているのかもしれない。となると、以下に述べるように、停戦への動きが始まっている可能性もある。しかし、そうなると、イランが北部戦線を発火させる可能性もあるので、注意が必要かもしれない。今は停戦のタイミングや方法が模索、交渉され始めているようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。