ガザからロケット弾とカタール支援金の関係 2020.6.16

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15日夜、ガザからイスラエルに向けてミサイルが発射された。空き地に着弾したので、被害はなかった。ガザからロケット弾が飛来するのは約ひと月ぶりである。いつものように、イスラエルは、戦車と戦闘機の双方からガザのハマス関連地域への反撃を行った。

これに先立ち、ハマスとイスラム聖戦は、「イスラエルが西岸地区の一部とヨルダン渓谷を7月1日に併合すると言っていることに対し、抵抗武装闘争を開始する。」と宣言。しばらく平穏であったイスラエル南部国境に、爆発物を装着したバルーンの束が再び飛来しはじめ、緊張が高まっていた。

ハマスの政治部のサレ・アル・アロウリ副代表は、イスラエルの併合案に対し、全域での抵抗を開始すると述べ、(敵対している)パレスチナ自治政府とも協力することを示唆している。

www.timesofisrael.com/gaza-rocket-strikes-field-in-israel-as-hamas-urges-resistance-to-annexation/

<カタールからガザへの支援金5000万ドル(約55億円)搬入へ>

こうした中、カタールがまたガザへの支援金として現金5000万ドルの申し入れを表明。搬入するとすればイスラエル経由になる。

イスラエルは、15日朝、爆弾つきバルーンを停止することと引き換えに、この金をガザへ搬入すると発表した。ところが、その金が、夜になっても搬入されなかったところ、イスラエルに向かって、ミサイルが飛ばされてきたという状況である。

イスラエルでは、今回のミサイルは、西岸地区・ヨルダン渓谷併合問題ではなく、支援金搬入の遅れが原因だとの分析が主要となっている。金をくれなければ、攻撃する、というよろしくないパターンの表れともいえる。

*カタールのガザ支援

カタールは、石油収入から、多くの国に支援を送っている。日本にも2011年の東日本大震災の際に支援金を送ってくれている(カタール・フレンドシップ資金)。そのカタールだが、ガザへは、2014年のイスラエルとの戦争の後、復興支援として10億ドルを支援した。2019年には、10万家族に100ドルづつのキャッシュを支援している。

<イスラエル軍兵士の遺体返還はどうなるのか>

ガンツ氏は、選挙運動中、ネタニヤフ政権の平和との引き換えにガザへカタールからの現金を搬入するという姿勢に、反対を表明していた。ところが、今、ネタニヤフ政権下に入ったためか、その主張から離れて、防衛相の立場で、ガザへのカタール支援金搬入を認めたことになる。

ハマスに、2014年のガザとの戦争以来、遺体を捕らえられたままになっているイスラエル軍兵士の家族たちは、深い落胆を表明した。ガンツ防衛相は、この戦争のとき、イスラエル軍参謀総長であった。

イスラエルは、イスラエル軍兵士の遺体返還について、ハマスと水面下での交渉を行ってきたが、これまでのところ、成果はみられていない。家族にしてみれば、遺体を戻さないハマスになぜ、5000万ドルもの大金を与えるのか。もはや遺体返還はあきらめたのかという怒りが噴出している。

www.timesofisrael.com/israel-said-to-let-50-million-in-qatari-aid-into-gaza-balloon-attacks-to-halt/

<ガザのコロナ問題>

パレスチナメディアによると、6月16日の報告で、ガザの感染者は72人で死者は1人。西岸地区は、感染者は434人で死者は2人。東エルサレムは、感染者184人で死者は2人。

english.wafa.ps/page.aspx?id=eXq7y2a117438706176aeXq7y2

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。