エルサレムでバス停に車両突っ込みテロ:5歳児と20歳死亡・7歳児重傷 2023.2.11

Israeli police forensic team work at the site of a car-ramming attack at a bus stop in Ramot, a Jewish settlement in east Jerusalem, Friday, Feb. 10, 2023. A suspected assailant rammed his car into several pedestrians in east Jerusalem on Friday. Police said that the suspected attacker was shot at the scene. There was no immediate word on his condition. Police identified the ages of the injured children as 5 and 6. (AP Photo/Mahmoud Illean)

エルサレムで車両突っ込みテロ

10日金曜安息日入りの朝、東エルサレムのラモットの、ナビ・サムエル(預言者サムエルの墓とされる場所)に近い、交差点近くのバス停に、普通車が突っ込み、バスを待っていた6歳児と20歳の青年が死亡。5人が負傷した。運転手は、近くにいた警察官が射殺した。

このテロで、犠牲となった1人は、ヤコブ・イスラエル・パーレイ君(5)で即死だった。ヤコブ君は、ユダヤ教の律法に従い、同日、安息日が始まる夕刻までに埋葬された。

もう一人は、アルター・シュロモー・レデルマン(20)さん。超正統派ユダヤ教徒、イシバ(ユダヤ教神学校)の学生で、2ヶ月前に結婚したばかりだった。この日は、安息日に両親の家に向かっているところで、このテロの犠牲となった。アルターさんは、いったん病院に搬送されたが、そこで死亡が確認された。

負傷者5人のうち、かなりの重傷となっているのは、7歳少年で、死亡したヤコブ君の兄。2人の父親(42)も中等度の負傷を負っている。このほか、2人(20代)が重傷。もう一人は10歳で軽症とのこと。

小さい子供や、安息日に家族の元へ向かっている中での犠牲であっただけに、人々の間にかなりのショックが広がっているもようである。

車を運転していたのは、東エルサレムのイサウィヤの住民、フセイン・カラカ(31)で、精神疾患を持つパレスチナ人で、数日前にイスラエル北部の精神病院から退院したばかりだった。

しかし、目撃証言によると、カラカは、思い切りアクセルを踏んでバス停へとつっこんでいたことから、警察はテロ事件として取り扱っている。また、フセインは、フェイスブックに、イスラム聖戦指導者を称賛したり、新グループ、ライオンの砦のメンバーがイスラエル軍に殺されたことへの追悼を書き込んでいた。

イスラム聖戦とハマスは、これを称賛したが、いずれも犯行責任を認めることはなかった。イスラエル軍は、いつものように、テロリストの家を封鎖した。後日破壊することになるとみられる。

極右ベン・グビル国内治安相・現場へ

国内治安相として警察を参加に置く、極右政党のベン・グビル氏は、現場を訪れ、イサウィヤを完全包囲することを命じたが、これは法的に問題があるとして、実施はされなかった。ベン・グビル氏は、極右派で、テロリストは死刑にするべきと言うなど、過激な発言が続くいている。現場を訪問した際には、「(おまえのせいで)もっと酷いテロが起こる」との声があったとのこと。

またベン・グビル氏は、現場で、「防衛の盾作戦2」*を実施すると述べ、政府関係者からは、路上で簡単に口走ることではないとの非難が出た。

イスラエルでは、ここしばらくの間に市民31人がテロ事件の犠牲になっている。一方、自治政府にイスラエルの治安部隊が踏み込み捜査を継続して行っており、衝突で死亡したパレスチナ人は、昨年171人。今年に入ってからだけですでに42人となっている。いわばすでに、防衛の盾作戦がはじまっているような状況かもしれない。

*防衛の盾作戦
イスラエルでは、過去に、パレスチナ人によるテロの波“インティファーダ”が、2回あった。「防衛の盾作戦」とは、2002年の「第二インティファーダ」の時に、イスラエルの治安部隊が、この波を止めようと、先に西岸地区のパレスチナ人の町々を急襲し、テロリストを逮捕しようとした作戦のことである。1月ほどの間に、イスラエル兵31人と、パレスチナ人497人が死亡した。

www.timesofisrael.com/at-least-6-wounded-2-seriously-in-suspected-car-ramming-attack-in-jerusalem/

www.israelnationalnews.com/news/367271

石のひとりごと

6歳児が死亡し、その兄もまた重傷。夫も負傷したとなると、その母親であり妻は今どうしているのだろうか。朝元気だった6歳児が、その夜にはすでに埋葬されていなくなっているのである。

また2ヶ月前に結婚したばかりの若い妻は、夫を失った。しかも、安息日、主を覚える日にである。本当に、私たちには全てを理解することができないのだと思わされる。ユダヤ人であるということは、本当に生やさしいことではない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。