イスラエルに金メダル:男子体操ゆかのドルゴピャト選手 2021.8.2

イスラエル史上2個目の金メダル

1日、男子体操ゆかで、イスラエルのアルテム・ドルゴピャト選手(24)が、スペイン(銀)、中国(銅)を破って、イスラエル史上2個目となる金メダルと獲得した。(1回目は、2004年のアテネオリンピックでのウインドサーフィン)。

以下は、東京オリンピックではないが、昨年12月ヨーロッパ・チャンピオンシップでのドルゴピャト選手の体操ゆかの演技。

金メダルを受賞したことで、東京のオリンピック会場にイスラエル国家ハティクバが流れた。

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イスラエル国内が興奮したことは言うまでもないことである。ちょうど閣議を始めたところであったベネット首相は、閣僚たちがいる前で、ドルゴピャト選手に電話をかけ、「イスラエルの歴史をつくったね。」と祝いを述べた。ドルゴピャト選手は、「空にも登る心地で、まだ降りられない。」と喜びを語っている。なお、金メダル選手としての賞金は、50万ドル(約1500万円)とのこと。

*ドルゴピャト選手はウクライナからの移民

ドルゴピャト選手は、ウクライナで生まれ。父親が体操の経験があったことから、6歳から体操の訓練を受けていた。しかし12歳の時に、家族とともにイスラエルへ移住。最初はヘブライ語がわからなかったため、苦労したが、体操があったので、がんばれたと語っている。

18歳で従軍してからは、その才能が認められ、時間の一部を体操の訓練に使うことができた。これまでにも数多くの国際チャンピオンシップで、多くの受賞している。この金メダルは、イスラエルにとって大きな栄光となった。

しかし、法的にドルゴピャト選手は、現在のイスラエルの法律ではユダヤ人と認められていない人である。父親はユダヤ人だが、母親がユダヤ人でないからである。このため、ドルゴピャト選手は、イスラエルのユダヤ教正統派の基盤にした法律によれば、ユダヤ人でないということになり、イスラエル国内で法的な結婚ができない身の上だという。

ドルゴピャト選手には、恋人がおり、すでに3年ほど同居している。しかし、届出ができないので、国外で結婚して既婚者として登録するしかないという。イスラエルにはこういう、事実上は結婚だが、書類上はまだと言う人がかなりいる。

ドルゴピャト選手の母親アンジェラ・ビランさんは、イスラエル国内FM放送のインタビューで、息子はイスラエルの栄光になったが、実生活では2級市民のようだとその矛盾を指摘する発言をしている。新政権は、めずらしく、超正統派を含まない連立政権である。今後、こうした点にも変化が出てくるかもしれない。

いずれにしても、ドルゴピャト選手は、金メダル受賞を喜ぶイスラエル人に対し、「I love you all」と言っている。イスラエルを祖国として愛し、金メダルと祖国イスラエルにもたらしたことを喜んでいることに変わりはない。

www.timesofisrael.com/israels-new-national-sports-hero-cant-marry-in-the-country-mother-laments/

柔道混合で銅メダル

この前日の7月31日土曜、イスラエルの柔道混合チームが、ロシアのチームの勝って、銅メダルを獲得した。今大会での銅メダル2つ目である。

イスラエル代表の中で、メダルを最も期待されていたのは柔道であった。しかし、サギ・ムキ選手始め、期待のかかっていた選手はみな、メダルを逃していた。最後にメダルを獲得でき、不名誉挽回となった。

www.timesofisrael.com/israels-mixed-judo-team-wins-bronze-a-2nd-medal-for-nation-at-tokyo-olympics/

ムキ選手とイラン人ムラエイ選手再会

余談になるが、サギ・ムキ選手は、イラン人柔道選手で、友好関係を深めているサイード・ムラエイ選手と東京で会っていた。

ムラエイ選手は、2019年、日本で行われていた柔道トーナメントで、イスラエル人選手との対戦を避けるようイラン本国から指示を受けたが、これを拒否。逆に公にこの件を公表したことからイランに帰れなくなった。

その後、ドイツで正式に難民のステータスを取り、受け入れ先のモンゴルで市民権を取り、東京大会では、モンゴル代表として出場していた。結果、ムキ先選手は早くに負けてしまったので、対戦はならなかったが、ムラエイ選手は銀メダルと獲得した。

その際、ここまで来れたのは、ムキ選手をいつかは戦いたいという思いに支えられてきたからだとして、受け入れ先のモンゴルだけでなく、イスラエルに感謝を表明。メダルは、イスラエルにも捧げたいと述べたのであった。

今大会で二人が会えたかどうかと思っていたが、無事再会していたようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。