イスラエルに注目し始めた日本 2014.10.21

今年4月、ネタニヤフ首相が日本を訪問。7月には茂木経産省がイスラエルを訪問して、政府レベルでの産業開発で協力関係を締結するなど、日本は政府をあげてイスラエルとの関係を強化しはじめている。

その背景には、第二のシリコン・バレー、またはシリコン・ワジ(ヘブライ語で谷)と言われるイスラエルのIT技術がある。

イスラエルは、小国ながら、アメリカに次ぐ世界第二位のIT関連スタートアップ(起業)国。私たちが日常使っているPCの中には、実はイスラエル発信の技術が満載されている。

イスラエル人が開発し、その技術を元に立ち上げた会社を、NECなど大手会社が、何百万ドルというような大金で買い上げ、PCの中に組み込んでいるという仕組みだ。今、日本が、今最も注目しているのが、イスラエルのサイバー・セキュリティ技術である。

<トヨタがテルアビブで、日系企業初のハッカソン開催>

テルアビブでは、今週、トヨタが、日系企業では初めて、イスラエルでのハッカソンを開催する。ハッカソンとは、様々なソフトウエア技術関係者が数日間集まって、技術を競ってアイディアを出し合うという催し。いわばIT技術のブレーンストーミングのようなもの。

今回のトヨタのハッカソンでは、自動車関連の技術をイスラエルの起業家たちに競い合ってもらい、優れた技術をトヨタや、他の日系企業が買い上げる。現在、山口壮外務副大臣はじめ、日系企業の代表団もイスラエルを訪問している。

今回のハッカソンは、「世界の常識「イスラエル」をもっと皆様の近くに」とする日本の若手企業Japan Innovation Center(イスラエル在住CEO岡田一也さん )、サムライ・インキュベーターと呼ばれる日系スタートアップ系企業がバックアップしている。

*サイト参照/必見!:Japan Innovation Center(日本語) japaninnovationcenter.com

          サムライ・インキュベーター(英語) http://www.samurai-incubate.asia 

日系企業でハッカソンをイスラエルで開催するのはトヨタが初となるが、イスラエル側は、他の会社もこれに続くと予測している。

イスラエルと日本企業を結ぶJapan Knowredgeを長年経営しているイスラエル人ビジネス・ウーマンのベレッド・ファルベルさんによると、日本は、これまでアラブ諸国の機嫌を損ねる事を恐れ、イスラエルとのビジネスには常に消極的だった。

しかし、今、その流れが急速に変わり始めているという。日本人でこの波に乗れる働き人が足りないと”うれしい”悲鳴をあげている。

<エルサレムでジャパン・ウィーク(外務省)・ヘブニーズ(石井マレさん)も出演>

エルサレムでは、19日から25日まで、ジャパンウィークが開催されている。主催は、エルサレム市と日本外務省の協賛。

昨日のオープニングでは、イスラエルからは、エルサレムのバルカット市長、ギドン・サル内務相、日本からは、山口壮副外務大臣、松富重夫駐イスラエル大使夫妻が出席。多くの日系企業関係者が招かれていた。

ギドン・サル内務相のヘブライ語のスピーチでは、元駐日大使のエリ・コーヘン氏が袴姿でヘブル語から日本語へ通訳。相当なしっちゃかめっちゃか通訳だった。本人も「むちゃくちゃですみませんと」と言われていたが、日本人(しかもヘブライ語がわかる)以外にはだれにもわからないので、まったく問題なし。

元敏腕ビジネスマンのバルカット市長は、これまでに何度も日本に言った事があるという。日本とイスラエルの文化は本当に違うと語り,
互いの文化交流への期待を語った。

またイスラエル人には根強い人気の日本文化イベントを行うことで、エルサレムにイスラエル人観光客が来るというの彼の狙いも語った。イスラエル側は、そろって、これを機に、次は日本でイスラエル・ウィークを開催してほしいと要請していた。

その後、両国の関係祝福を祝って、樽酒の鏡開きが行われた。しかし、さすがイスラエル人。ハンマーをそれぞれがさっさと振り下ろしてしまい、音頭取りが慌てる場面も。

ちなみに、イベントの雰囲気だが、しっとり静かな伝統的日本文化ではなく、日本文化の要素を含む近代的日本文化。バイオリンとお琴、パーカッションで、現代風のアレンジをしたテンポの早い曲が披露され、小錦が出演してウクレレ演奏。

また、”外務省推薦”で、アメリカなどでも人気を得ている日本風バンドのヘブニーズ(石井マレ牧師・別のバンド名は天国民)が出演している。http://heavenese.jp/live/2014jerusalem/index.html

この他、会場周囲では、茶道のデモンストレーションや、浴衣や着物販売などがある。食事(立食式)はもちろん日本人職人による寿司。

*ヘブニーズについて 

今回、遅ればせながら、石井マレさん率いるヘブニーズの存在を始めて知ることとなった。バンドのレベルはかなり高く、3回のアメリカツアーでも成功をおさめている。アメリカでは、日本のクリスチャングループとして知られる。

アメリカでは学校などを訪れ、演奏活動とともに、「和」の心を解く。イスラエルでも、学校訪問が予定されている。イスラエルは紛争の地だとして、さらに「紛争国に和を」とメッセージに力が入っている。http://heavenese.jp/live/2014jerusalem/support.html

日本では全国の神社境内などでも、コンサートを開催。その中で、賛美やメッセージも語っているという。しかし、イスラエルで配られたちらし(HPにも)には、厳島神社の写真があしらわれており、度肝を抜かれた。

石井さんは、パワフルな聖霊派牧師・伝道者だが、神社、神道は、聖書、ユダヤの神から来た、ルーツは同じだという説を取り入れており、ステージに、神社関係の要素ももりこんでいる。福音は欧米だけのものではないと主張する。アメリカのクリスチャンはそれを聞いて拍手する場面も。 https://www.youtube.com/watch?v=-QPtwUTsW9Q#t=390

*この説については、日本の教会では賛否両論あり、論議になっていることに注意。 

—参照:ヘブニーズHP http://www.heavenese.jp/media.html 
(日本文化風賛美!?Praise the Lordの他、日本の太鼓を集団でたたきながらハレルヤ!と叫ぶなど)

<海外進出に力を入れる安倍政権>

安倍首相は、自らも外遊を積極的に行い、海外支援にも力を入れている。

アメリカの要請を受けて、エボラ熱封じ込めのために日本人医療従事者を、現地派遣しているほか、先頃、憲法9条の解釈改正を成立したことを受けて、自衛隊をドイツにあるアメリカ軍のエボラ熱対策部に派遣する予定である。

西アフリカ現地へ自衛隊を派遣することも検討中。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141018-00000076-san-pol

*エボラ熱については、WHOが、「今年末までの60日が勝負だ。負ければ人類が敗北する。」と警告したことを受けて、オバマ大統領が、本格的な協力活動を世界に呼びかけた。これを受けて世界各国が本格的に動き始めている。

<石のひとりごと>

日本は、アメリカとの関係強化、イスラエル接近と、徐々に旗印を明確にしはじめている。これは喜ばしいことであると同時に、ふさわしい人材育成が急務であること、また今後、テロなど海外の様々な課題と日本が無関係ではなくなっているということを覚悟する必要があるということである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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