イスラエルが見ている最悪のシナリオ 2020.3.18

出展:Amos Bn-Gershom (GPO)

4つのシナリオ

イスラエルでの感染者は、17日現在で324人と、総人口からすれば、まだわずかである。しかも死者は出ていない。しかし、イスラエルは、この1−2週間が、感染爆発への鍵とみて、相当な防止策や準備を講じている。イスラエルが予測する最悪の事態とは以下の通り。

このデータは、保健省のために、疫病と保健ポリシーの研究所の2人の博士と、工科大学の実用数学の教授が作成したものである。

レポートは4つのシナリオを打ち出している。

①最善のケース:感染者1人が1.2人に感染させる。人口の32%、57万6000人が感染し、8600人が死亡する。この際、1日あたり130人、10万8000人の重症者が発生し、病院では4000床を要し、1300床のICU(集中治療室)が必要になる。

②中間のケース:感染者1人が1.35人に感染させる。人口の47%が感染し、84万6000人が発症。1万2700人が死亡する。1日あたり340人、19万6000人の重症者が発生し、なベッドは、1万床、必要になるICUは3500床。

③中間のケース2:感染者1人が1.5人を感染させる。人口の58%が感染し、104万4000人が発症。1日あたり580人、19万6000人が重症となり、1万5700人が死亡する。必要な病床は、1万7000床。ICUは5700床必要になる。

④最悪のケース:感染者1人が2人を感染させる。人口の80%が感染し、144万人が発症。1日あたり、1450人、27万人が重症となり、2万1600人が死亡する。必要な病床は4万2500床。ICUは、1400床必要となる。

www.timesofisrael.com/israel-seeking-to-avert-worst-case-scenario-of-21600-virus-deaths-report/

正確な数字はまだ不明だが、科学者たちは、無症状でも、実はもう感染している人が、すでにかなりいるとみているようである。その人々が、知らない間に感染を拡大させているということである。

それを裏付けるような報告がある。ドイツ、フランクフルトの医療ウイルス学サンドラ・シーセック博士が、イスラエルからのフライトに乗っていた24人を検査したところ、7人がコロナ陽性だった。このうち4人は無症状だったが、この4人の検体の方が、より多くのコロナウイルスを含んでいたという。

予想以上に、無症状の人が感染を拡大している可能性が指摘されている。(CNN:3月16日)

edition.cnn.com/2020/03/14/health/coronavirus-asymptomatic-spread/index.html

最悪の場合、今ある医療体制では絶対に対応できなくなる。イスラエルはなんとしても、医療崩壊にならないよう、最悪のシナリオを元に、今、準備しているということである。準備しすぎと笑われても、彼らはまったく気にもしないだろう。

じわじわ終末の予感?:盗んだ考古学遺跡物を返還した男性

エルサレムで一人の男性が、15年前に、エルサレムの考古学遺跡ダビデの町で、盗んだ2000年前の石を、イスラエル考古学局に返還してきた。

男性が返還したのは、2000年前に使われていた、いわば大砲の弾とみられる石数個である。男性は、盗んだことを悔い改めたので、返しに来たとは言わなかったが、第三者のフェイスブックへの投稿で、この男性が、15年前に、展示されていたこの石を盗んでいたことがわかったという。

男性は、この石のことはそれきり忘れて大人になったが、コロナ危機を前に、また来月の過越を前に、罪から解放されようと思ったとみられる。

www.haaretz.com/archaeology/.premium-pending-coronavirus-apocalypse-impels-israeli-man-to-return-ancient-stolen-weapon-1.8679057

日本ではまだ感染は少ないので、世の終わりなどというと、きっと笑われるか、避けられるだろう。しかし、イスラエルは3大宗教の発祥地でもあり、これだけの危機感から、終末時代や、その時に現れるメシア(救世主)の話題が、出始めている。以下はエルサレムポストの記事からの抜粋。

ユダヤ教ラビは、「メシアが来る。神の前に悔い改めよ。」といい、特に同性愛者を容認していることへの罰だと言って、社会から大批判を浴びたラビがいた。また、「イスラムが、我々に神殿を建てるようにいうかも」と言うラビもいる。

キリスト教については、アメリカの牧師(福音派)が、やはり同性愛の罪を悔い改めよと言っていると、エルサレムポストは報告している。イスラムについては、「コロナは、神アラーが地上に送った兵隊だ。アラーが罪人をさばいているのだ。」と言っていたとのこと。

無論、どれも、一部の指導者だけで、それぞれの宗教の教えを代表しているわけではない。また、イスラエル国民のほとんどは、これらに同調する様子はない。しかし、イスラエルでは、こういうものが出始めるほどの様相になっているということである。

www.jpost.com/International/Religious-leaders-Coronavirus-is-punishment-sign-of-the-messiahs-coming-621339

石のひとりごと

日本では、感染者も死者も増えているが、確かにまだ欧米諸国やイスラエルほどではない。また経済への影響を考えると、あまり厳しい規制は逆の悪影響を生み出してしまうこともあり、安倍首相は、今はまだ緊急事態宣言にはあたらないと判断したと国民に伝えた。

しかし、イスラエルがここまで計算した上で、最悪に備えている様子をみると、もしかしたら、これはマジかもしれないとも思わされる。アメリカでも混乱が拡大する中、いつかは日本にも混乱が来るのではないか。

かつて、ノアが、来るべき大洪水に備えて大きな船を作るよう、神からの指示を受けた時、多くの人は、それを信じずに、なんの準備もないまま、その日を迎えてしまった。

何があっても驚かないように、心の準備とともに、イスラエルのようにコロナの先をいけるほどの準備もできるならそれにこしたことはないだろう。また、この危機にあって、今、イスラエルの予想が的中しないよう、イスラエルと同じぐらい真剣にとりなす必要がある。

しかし、地球温暖化で気候が狂い始めていることからも、日本でも、地球の終わりが近いかもと感じ始めている人は少なくない。聖書に書いてある通りである。

クリスチャンとしては、聖書の約束である福音(罪の問題は、イエス・キリストが十字架で、代わりに罰を受けて解決してくれているのだから、それを信じれば、地球に終わりが来ても、たとえ死んでも、裁きは解決済みになっている)の希望をできるだけ伝えていきたいと思う。

ですから、信仰によって義と認められた私たちは、私たちの主イエス・キリストによって、神との平和を持っています。またキリストによって、いま私たちの立っているこの恵みの信仰によって導き入れられた私たちは、神の栄光をの望んで大いに喜んでいます。そればかりではなく、患難さえも喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと知っているからです。この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです。(ローマ書5:1−5)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。