イスラエルからガザへ:ビクター・カリシャー牧師・イスラエル聖書協会代表 2014.8.13

エルサレムのイスラエル聖書協会は、これまでからも長くパレスチナ聖書協会と密に連絡をとりながら、パレスチナ人へのミニストリーを行って来た。

たとえば、イスラエル側の病院へ治療に来たガザ市民への支援活動である。ビクターさんによると、前回のガザとの戦争でイスラエルに来たパレスチナ人に、メシアニックの人々がアプローチすることも問題なかったという。

ビクターさんによると、今回のガザとの戦争中でも、パレスチナ人が中へ入り込むことは可能だった。その人物を通して食料や資金が、ガザ地区内部のクリスチャンたちに運ばれていたという。中東なので、なんとでもなるのである。

ビクターさんによると、ガザ地区の食料は、今のところ十分あるとのこと。ただし、愛する家族を空爆で失い、建築しては破壊されることの連続であるため、今、ガザの人々は、大きく傷つき、絶望しているという。

「世間ではハマスが悪いなどと語られているが、それは重要なことではない。いすれにしても人々は傷ついている。ここに私たちは注目すべきだ。分析よりも今彼らに必要なのは、癒しと希望だ。」と語る。

希望とは、聖書のみことばとイエスキリストによる赦しと新しい生き方 —憎しみと破壊ではなく、愛され愛する生き方—である。物理的な支援なら、UNなど他の団体にもできる。私たちが持っている福音を提供しなければ、基本的な解決はない強調する。

ガザでは、当然、福音伝道は、危険すぎてできる状態にはない。しかし、大きな絶望が広がる時というのは、人々が生き方を変えるチャンスになりうるとビクターさん。今は、ちょっとした心に届く支援の手がみことばになる。

もちろん、ユダヤ人がガザ地区へ入る事は不可能だが、ビクターさんはガザ地区内部のクリスチャンたちとメールでやり取りしているほか、パレスチナ聖書協会の兄弟たちと連絡をとりあって、今もガザの教会へ支援の方法を模索中だという。

<イスラエル人も傷ついている>

ビクターさんは、傷ついているのは、ガザの人々だけではないと強調する。

南部地域の住民(ガザからの侵入者を受けたナハル・オズ)は、イスラエル軍に帰宅しても安全と指示を受けても、今も帰れないままである。人々は北部のガリラヤ周辺でテント生活だという。ナハル・オズは、イスラエル軍が往来するだけの軍基地のようになってしまった。

夏休みが終われば子供たちが学校へ戻るので、それまでになんとか平穏が戻ればと願っている。

またホロコースト生存者の中には、ミサイルのサイレンの音でPTSDを再燃させてしまった人も少なくない。そういう人は北部へ避難させた。

<石のひとりごと:戦没者墓地の静けさ>

先日、エルサレムのヘルツェルの丘にある戦没者墓地に行ってみた。新しい墓地が4つ掘られていた。重苦しい静けさの中、土を掘るシャベルの音だけが聞こえた。

その周囲には静かに若い兵士たちが立っていた。ある新しい墓石の前には、若い男性が立ったまま長い間動かなかった。

つい最近まで元気だった人が今はもう声も形もなくなってしまった。あまりにもあっけなく、いなくなってしまった。イスラエル国内での日常はほとんど何も変わらない。ガザにさえ行かなければ、その人は今日もいつものように、そこにいたのである。

その現実を家族や親しい友人たちはどう受け止めているのか。今、兵士として従軍している19才たちはどうとらえているのか。イスラエルの存在、その平和がいかに高価なものであるかを改めて考えさせられた。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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