アメリカがイスラエルの緊急時武器庫からウクライナへ武器供与か:ニューヨークタイムスより 2023.1.18

BBC スクリーンショット https://www.youtube.com/watch?v=t88-CHESdh8

イスラエルの武器庫からアメリカがウクライナへ武器を搬送

ウクライナは、イスラエルに優れた迎撃ミサイルシステムがあることを踏まえ、イスラエルに武器支援を要請し続けている。しかし、イスラエルは、シリアにおける対イラン、ヒズボラ対策を継続しなければならないため、その支配者であるロシアとの関係を断ち切ることができない立場にある。

このため、イスラエルは、今にいたるまで、ウクライナへの武器関連の支援はいっさい行っていない。新政権もその方針であることをすでに明確にしたところである。

しかし、ニューヨークタイムスによると、アメリカが、イスラエル国内に中東での緊急用として備蓄している武器庫から、多数の武器がウクライナへ搬送されていると伝えた。

それによると、移送された爆弾は30万発。まずヨーロッパに運ばれ、ポーランドを経由してウクライナへ運ばれたとのこと。

www.nytimes.com/live/2023/01/17/world/russia-ukraine-news?name=styln-russia-ukraine&region=TOP_BANNER&block=storyline_menu_recirc&action=click&pgtype=Article&variant=show&is_new=false

2022年11月30日ラピード前首相と、コハビ前参謀総長(右) IDFスポークスマンオフィス

Times of Israelによると、昨年、アメリカのオースティン国防省が、イスラエルのガンツ前防衛相にこの件について打診してきたという。ガンツ当時防衛相は、ラピード当時内閣と検討し、これを受け入れることしていたという。この件は、極秘で行われためか、メディアにはいっさい公表されていなかった。

このイスラエル国内のアメリカによる急用武器備蓄は、1973年のヨム・キプール戦争の時に開始されたという。以後、その存在は知られていたものの、大きくは公表されない状態に置かれた。この中の武器は、イスラエルにも使用が認められており、2006年のレバノン戦争、2014年のガザとの戦争の際にも一部が使用されたとのこと。

www.timesofisrael.com/us-quietly-shipping-ammo-to-ukraine-from-massive-stockpile-in-israel-report/

アメリカの意向でヨーロッパ経由ではあるのだが、イスラエルから出発した武器がウクライナに向かっているということである。プーチン大統領が、イスラエルに対し、どういう態度に出てくるのか、注目される。

1月18日時点・ウクライナ情勢まとめ:欧米VSロシアの様相へ

1)エスカレートする欧米のウクライナ武器支援

ウクライナ軍は昨年末にヘルソンを奪回するなど、大きな前進を見せた。バイデン大統領は、今こそ状況を一変させるときだとして、これまでの最大となる30億ドル(4000億円)をウクライナ支援にあてると発表。累計3兆円をウクライナに注ぎ込む形となった。

支援する武器も、M2ブラッドレーという歩兵を乗せて走る戦車50両や、自走式榴弾砲18両などと、攻撃性の高い武器が投入されることになる。アメリカに続いて、ドイツとフランスも戦車の供与を発表。最近ではイギリスも同様の意向を発表している。

www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/900/478321.html

2)ロシアの反撃

こうした中1月14日、ロシアは、ウクライナ全土に向けて大規模なミサイル攻撃を行なった。南部ドニプロでは、9階建てアパートに直撃して、住民74人(子供6人含む)が死亡するという大惨事になった。ゼレンスキー大統領によると、ハルキウやキーウも大きな打撃を受けたとのこと。

ドニプロなどへの激しい攻撃から2日後、ロシア軍は、ベラルーシで、ロシア軍、ベラルーシ軍による共同軍事訓練を開始。予定では2月1日まで継続されることになっているとのこと。ウクライナへの見せつけである。

www3.nhk.or.jp/news/html/20230116/k10013951111000.html

また、ロシアのショイグ国防相は18日、ロシア本土とウクライナから奪還した南部4州の防衛のため、総戦力を150万人に増やすことが決まったと発表した。目的は欧米諸国によるロシアに対する代理戦争に備えることだと言っている。

しかし、一方で、ロシア軍は、ハルマゲドン将軍と恐れられたスロヴィキン総司令官を解任。ゲラシモフ軍参謀総長が総司令官が総司令官に任命される(3ヶ月に2回目交代)など、理解しがたい動きに出ている。

さらに、ロシア軍に協力する民間軍事会社ワグネルの司令官の一人、アンドレイ・メドベージェフ氏が、13日ごろにノルウェーに亡命したことが公となり、物議になっている。メドベージェフ氏は、ロシア軍内部で戦争犯罪を目撃したとして証言しているが、これにどう対処するのか、ノルウェー政府も少々頭を抱えている様相である。

プーチン大統領は、これまでからも何を考えているのかわかりにくい指導者であったが、その傾向は今も変わっていないようである。

www3.nhk.or.jp/news/html/20230118/k10013952891000.html

3)ウクライナと国際社会の反応

ウクライナのゼレンスキー大統領は、これからは、ミサイルを撃墜するパトリオット迎撃ミサイルシステムが必要だとして、国際社会にその供与を訴えた。アメリカはすでにその方向で、米国内でウクライナ兵約100人の訓練にあたっている。またこれに加えてオランダが、その準備があると発表した。

world Economic Forum jp.weforum.org/videos/davos-am23-pre-meeting-press-conference-english%5B/caption%5D

一方、欧米社会は、ロシアがウクライナへ大規模ミサイル攻撃を行なったと同日、16日から、20日までに予定で、スイスにおいて、世界の首脳や角界のトップが集まる世界経済フォーラム(ダボス会議)を開催。

この会議に、ウクライナのゼレンスキー大統領夫人、オレナさんが出席し、欧米諸国が一致していないことを指摘。世界の崩壊に近づいていると警告し、ロシアに対して一致するよう呼びかけた。

ロイターによると、オレナさんは、中国に和平案の書簡を渡す予定とのこと。中国はロシアと同じ専制主義国だが、ロシアのウクライナ侵攻には同意していない立場であるとみられている。その点からの和平案なのかもしれない。

jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-davos-firstlady-idJPKBN2TW1EO

なお、この会議では、世界がグローバリズムが終焉して分断に向かっていること、経済においてもブロック下がすすんでいる。これにより、景気が悪化するとの危機感が共有され、あらたな協調の必要性が確認されている。

石のひとりごと

ロシアと欧米の対立には、中国、台湾、北朝鮮問題も関係してくる。中国は人口減とGDPの低下が明らかにあったばかりでなく、コロナによる死者数は、計り知れない事態になっている。これから中国がどんな出方をしてくるのか、こちらも全く目を離せない状況である。

今回、アメリカがイスラエルに保管している武器を調達していたことが明らかになったが、アメリカは韓国からも武器を調達しているという。日本は、提供する武器はないものの、自衛隊の武力を強化して、いざと言う時には、アメリカの世話になるだけではないという姿勢を世界にアピールしたところである。

ニュースを追いかけるに、世界はいつ第三次世界大戦になってもおかしくない流れになっている。来年の今頃、どんなニュースになっているのか。戦争が終わり、落ち着いているか、その反対か。時間を超えて、世界のすべてを支配する主に、我々人類をあわれみ、指導者たちを最善に導き、世界が大惨事にならないように祈る思いである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。