ガザでは、この1週間の間に、戦死者が8人も出た。1週間の死者数は、これまでで最大だった。2023年の10月7日以来、戦死者の総数は、866人である。
www.ynetnews.com/article/s1411fkxqlx
ネタニヤフ首相とその政権は、あくまでもハマスを殲滅するまでガザでの戦争を続けると言っている。しかし、その実現性が明確でないことや、人質を助けるためとはいえ、すでに、その人質の数以上のイスラエル兵(多くは予備役兵)が戦死していることから、イスラエル市民の間では、政府の方針に疑問を覚える人が増えている。
イスラエルの民主主義研究所が、5月26―29日の間に、18歳以上(従軍年齢)のイスラエル市民に対して、今のガザでの軍事作戦で、人質を取り返せると思うか、また、ガザでのハマスの支配を終えられると思うかどうかの調査を行なった。ユダヤ人601人、アラブ人150人が回答していた。
それによると、軍事作戦で人質を奪回できると思うと答えたユダヤ人は39%、アラブ人は27.5%だった。ハマスを殲滅し、ガザでの支配を終えられると思うと答えた人は、ユダヤ人で40%、アラブ人で31%だった。
作戦が成功すると思っている人が半数以下ということである。ではどうするかなのだが、ハマスがガザに残留することになってもしかたがないとし、とりあえず停戦し、交渉で人質地を全部取り返すことを支持する人が増えているということである。以下は、6月5日のテルアビブでの反戦デモの様子
ネタニヤフ首相の支持率は低下しており、今総選挙になれば、過半数をとれないとの結果になっている。
<7月に超正統派5万4000人を招集予定:ユダヤ教政党は政権離脱示唆>
イスラエル市民の間では、超正統派の若者たちには、従軍義務がないことへの疑問や反発が高まっている。超正統派からは、自ら従軍してくる人も少なくないが、義務ではないため、ほとんどは従軍していない。市民の間には、不公平感が高まっている。
また、軍が人手不足であるだけでなく、若い世代が招集されて、社会も人手不足である。政府は、超正統派の若者に対する徴兵をずっと論議し、すすめようとしてきた。実際、昨年、召集令状が出されが、応じた人は、極わずかだった。
Times of Israelによると、イスラエル軍は、この7月1日から1年間の間に、超正統派イシバ(神学校)学生や若者たち5万4000人に、招集令状が出す。また、昨年、招集されたにもかかわらず、応じなかった超正統派にも改めて招集する。
www.timesofisrael.com/idf-to-issue-54000-conscription-orders-to-haredi-yeshiva-students-in-july/
超正統派居住地ブネイ・ブラックではこれに反対するデモが発生し、警察との衝突にもなっていた。
ユダヤ教政党は、反発しており、政権離脱も示唆している。今のネタニヤフ政権は、強硬右派政党、宗教右派政党と、ユダヤ教政党に支えられる形で成り立っている。もし、ユダヤ教政党が離脱した場合、今のネタニヤフ政権は崩壊する。すなわち総選挙である。
ネタニヤフ首相とその政権は、存続の危機にあるといえる。こうした状況で、最も効果的に国を統一するのは、戦争である。ネタニヤフ首相が、イランへの攻撃を実施するのではないかとの懸念も出始めている。