過激派抑圧をはかる?イスラエルとパレスチナの指導者たち 2020.5.20

マフムード・アッバス議長 出展:Wikipedia

パレスチナ問題に懸念

コロナ危機で、経済的にも想像を絶する苦難を経験しているパレスチナ自治政府。イスラエルから8億シェケルの借款を受けたほか、今回また、アラブ首長国連邦からベングリオン空港(つまりはイスラエルの協力)を経由して、支援物資を受けた。

これはイランのハメネイ師が指摘するように、アッバス議長にとっては屈辱だったかもしれない。しかし、一方で、施政者としては、これらの支援なくして、市民生活は維持できないわけである。

大部分のパレスチナ市民たちが、今、どう感じているのかは不明だが、若者たちの間では、イスラエルへの反発を強めているものもいる。先週、パレスチナ人が、入植地に来たイスラエル兵の頭上に石を投げつけて殺害。その後、各地でパレスチナ人の暴徒とイスラエル軍が衝突して、15歳のパレスチナ少年が死亡した。その後も、各地でイスラエル軍との衝突が続いた。

これに輪をかけるように、今週発足したネタニヤフ政権は、西岸地区の入植地とヨルダン渓谷の早期合併に意欲を燃やしている。ハマスが暴力を煽っていることもあり、今後、テロや暴力的な衝突が高まることが懸念されている。

特に今週22日のアル・クッズデー(イスラエルのエルサレム支配に反発する日)は、エルサレム統一記念日の翌日でもあるため、毎年ながら、暴力が懸念される日である。

一方で、西岸地区に住む過激右派ユダヤ人ユースグループ・ヒルトップユースのパレスチナ人への暴力も懸念される。イスラエルもパレスチナ自治政府も、コロナ対策で疲弊しているので、今衝突が起こってほしくないようで、様々な方策が講じられている。

イスラエルが過激右派に有罪判決

2015年、西岸地区デュマに住むパレスチナ人、ダワブシェさんの家に火炎瓶を投げ入れて放火し、一家3人を殺害した過激右派ユースグループの首謀とみられるアミラム・ベン・ウリエル(26)に対し、ロッド地方裁判所は、殺人の有罪判決を出した。罪状はこの他にも、殺人未遂2件、放火2件も含まれる。

ウリエルに殺害されたのは、ダワブシェ・サアドさんとリーハムさん夫婦と18ヶ月のアリ君で、この時4歳だったアフマド君は1人だけ生き残ったのであった。

ベン・ウリエルは、この犯行が、先に車内からの銃撃で死亡したユダヤ人マラケイ・ローゼンタールさんの復讐だったとその動機を述べている。ベン・ウリエルは、犯行から4ヶ月後に逮捕されたが、2019年7月に、釈放され、家庭内収監となっていた。

すでに2年半刑務所にいたこともあり、21日に出る予定の判決は5年以上にはならないとみられている。

負傷しながらも生き残ったアフマド君は、現在9歳で、祖父のフセインさんとともに住んでいる。判決について、フセインさんは、犯人がまだ出てこないということには満足だが、アフマドの苦しみを軽減することになはならないと語っている。

www.timesofisrael.com/jewish-extremist-convicted-of-killing-3-palestinian-family-members-in-2015/

イスラエルとアメリカとの合意破棄を宣言:アッバス議長

19日、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、イスラエルとアメリカと交わしたすべての合意を破棄すると発表した。

アッバス議長は、18日に、ネタニヤフ首相が、西岸地区の入植地とヨルダン渓谷を、7月1日までに合併すると発表したことについて、「1993年にイスラエルとパレスチナの間で交わされたオスロ合意を無効にするものだ。」と述べた。

オスロ合意とは、パレスチナの国の設立をめざして自治政府をたちあげ、ともに平和を築こうとする条約で、故ラビン首相と、故アラファト議長が、クリントン前米大統領の仲介で交わしたものである。

アッバス議長は、トランプ大統領が、エルサレムをイスラエルの首都と認めたことも、この条約に反すると述べ、アメリカとの合意もすべて破棄すると述べた。

しかし、アッバス議長が、合意をすべて破棄すると脅迫するのは今回が初めてではない。過去に何度かあったが、いつも結局は、イスラエルとの協力に戻らざるを得なくなった。今回も、実際どのようになっていくかは、不明と言える。

いわば、このまま何も言わなければ、国内のパレスチナ人からの不満が出てくるからとも考えられなくもない。

しかし、本気であれば、本当にオスロ合意の破棄ということにもなりうるということである。

www.timesofisrael.com/abbas-pa-no-longer-bound-by-agreements-with-israel-us-including-on-security/

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイド、イスラエル政府公認ガイドとして活動しています。 イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。