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アラブ同盟は、トランプ大統領のガザ一掃復興案の代替案を模索するため、2月4日(火)、カイロにおいて、緊急アラブサミットを開催した。
エジプトの案は、イスラエルとアメリカはこれを否定している。このサミットでは、このエジプト案をアラブサミットにかけて、トランプ案に対抗しようとするものである。
参加国は、エジプト、ヨルダン、レバノン、カタール、パレスチナ自治政府の首脳と、サウジアラビアは外相が出席。UAE(アラブ首長国連邦)は不参加。アラブ連盟のゲイト事務総長、グテーレス国連事務総長、EUのコスタ理事長が出席していた。
サミットでは、参加国と、ハマスもこれを承認すると発表した。
エジプト案とは:ガザ早期復興とパレスチナ国家設立基盤
エジプトのシシ大統領のガザ復興案は、ガザのパレスチナ人を移動させることなく、ガザを再建することと、パレスチナ人の国を設立することの二点で成り立っている。
①「ガザの早期復興、再建、開発」
シシ大統領には、ガザにパレスチナ委員会を立ち上げ、それが中心となり、5年を目標に復興を進める。
エジプトはこのビジョンのAI画像を公表。この計画のためには530億ドル(約8兆円)が必要と発表した。資金は、国際社会が調達し、世界銀行において管理する。
Times of Israelによると、まず半年、このパレスチナ委員会でプロセスをスタートさせ、順調ならば、その時点で選挙を行うと計画されている。
この委員会に、ハマスは加わらないとされているが、直接名指しでそう断言されているのではなく、「パレスチナ武装組織」となっているとのこと。
また、パレスチナ自治政府のアッバス議長(89)は、自治政府こそが、西岸地区とガザを支配、管理するべきパレスチナ人の組織だと主張している。
②パレスチナ国家設立
シシ大統領はこの会議において、「パレスチナ国家樹立なしに真の平和はありえない」と述べ、今こそ、パレスチナ人の国を設立し、2国家解決をする時だと語った。
この案については、イスラエルとアメリカが非現実的だとして拒否していた。今も530億ドルもの資金をだれがどのぐらい出すのかなどには触れていない。
しかし、このアラブ・サミットでは、グテーレス国連議長も出席する中で、このエジプト案を承認するとの声明を出したのであった。
イスラエル外務省:現状に対処できてない
アラブサミットの声明を受け、イスラエル外務省は、このエジプトの案が、現状に対応していないと表明。また、この案に、ハマスが極悪な犯罪を犯したことへの対応が、言及されていないと指摘した。
このサミットの前に、ネタニヤフ首相が、イスラエルは、トランプ大統領の案を支持すると表明していたが、サミット後の外務省の声明でも、アラブ案を否定し、トランプ案への支持を表明した。
石のひとりごと
要するに、このエジプト案は、トランプ案に反対を表明するだけで、これまでとほとんど変わらない形に戻ることになるだけのように思う。
国連事務総長は参加していたが、サウジアラビアの首脳は参加しておらず、UAEは代表を派遣もしていなかったことが、それを物語っている。
トランプ大統領が世界に物議を撒きこしていることの本質は実質である。今世界は、理念や人間的正義、過去ではなく、現状と実質を見て前に進む時代への過渡期に立っているのだろうと思う。