米国籍人質エダン・アレクサンダーさん解放:残りの人質はどうなる?2025.5.13

アメリカ国籍人質エダン・アレクサンダーさん(21)解放

アメリカとイスラエルの二重国籍のイスラエル兵で、ガザで人質となっていたエダン・アレクサンダーさん(21)が、5月12日(月)、584日後にガザから解放された。アメリカから駆けつけた家族と、感動の再会を果たした。

エダンさんの家族、両親のヤエルさん、アディさんと兄弟たちは、ハマスがエダンさんを解放すると表明したことから、すぐに、米政府人質担当のアダム・ベーラー氏とともにイスラエルにやってきた。ガザ国境のイスラエル軍基地へは、ウィトコフ特使と、ネタニヤフ首相府から人質担当のガル・ヒルシュ氏が同行した。

エダンさんは、12日、午後6時ごろ、ガザ南部カン・ユニスで、3人のハマスに静かに赤十字に引き渡され、その後、イスラエル軍に引き渡された。エダンさんは、笑顔だったが、ガザで拷問にあい、手足を縛られて狭いところに閉じ込められていたと語ったという。

IDF

その後、ガザ国境のイスラエル軍施設で、家族たちと再会したのであった。そこからイスラエル領内に行くヘリコプターの中で、エダンさんは、トランプ大統領への感謝を表明していた。

www.timesofisrael.com/us-israeli-hostage-edan-alexander-freed-from-hamas-captivity-reunites-with-family/

エダンさんの解放を受けて、エダンさんの出身地であるアメリカのニュージャージーでは、大勢が踊って喜ぶ様子が伝えられている。

www.timesofisrael.com/in-edan-alexanders-new-jersey-hometown-crowd-celebrates-joy-of-his-release/

トランプ大統領の勲章:イスラエルは蚊帳の外

エダンさんの無条件解放は、トランプ大統領に好意を示すためだと言っており、明らかにアメリカ人であるということが解放の要因であった。

また、今日、トランプ大統領は、サウジアラビアに到着する。エダンさんとその家族もサウジアラビアに飛んで、そこでトランプ大統領と面会する予定になっている。まさに勲章のような写真になることだろう。

エダンさんが、他のイスラエル人を置いて、まず解放されたことは、トランプ大統領にとっては、「アメリカ・ファースト」の象徴のような存在でもある。

こうした中、イスラエルは、ほぼ蚊帳の外におかれた状態であった。

ネタニヤフ首相は、これまでのイスラエル軍によるハマスへの厳しい攻撃が、エダンさんの解放実現に一役買っていたと言っているが、トランプ大統領に栄光は全部持って行かれたことは否めないだろう。

www.timesofisrael.com/trump-puts-an-american-first-and-israel-rejoices/

複雑な人質家族の心境「アメリカ国籍を持たない人は価値がないと言われているようだ」

エダンさんの解放は、大変な喜びではあるが、人質家族たちの間では、アメリカ国籍があったエダンさんが解放された後、今も残されている人質は今後、どうなるのか懸念が高まっている。

今まだ人質として、ガザの残されている人は58人。このうち生きているのは21人とみられている。多くはキブツ・ニール・オズに関係する人々だという。

家族たちは、エダンさんが、解放されたことは確かに喜びであり、希望だとしながらも、「アメリカ国籍以外の人の命は、価値が低いと見られているような気がする」との警告も発した。

ハマスに降参迫るか:イスラエルがドーハへ交渉団派遣

トランプ大統領は、エダンさんの解放が、他の人質解放と、ハマスとイスラエルの戦争の終結につながっていくことを希望すると言っている。

一方で、イスラエル政府が同じ方向を向いているのかどうか、疑問視する声もある。ネタニヤフ首相は、エダンさんが解放されるにあたり、アメリカに対して、イスラエルは今後もハマスへの攻撃は辞めないと改めて伝えていた。

また、ハマスとの交渉において、第二段階へ進むことを頭から拒否したのは、ネタニヤフ首相だった。政権の強硬右派であるスモトリッチ財務相が、ガザ地区にユダヤ人の再定住についても示唆したこともあり、ネタニヤフ首相は、戦争を終えたいとは思っていないのではないかとの見方が広がっている。

しかし、Ynetの分析では、ネタニヤフ首相がトランプ大統領に逆らう行動は取れないだろうと見ている。またエダンさんが解放されたことで、イスラエルだけでなく、国連からも残りの人質の解放を訴える動きが始まっている。

こうした中、ネタニヤフ首相は、ドーハに代表団を派遣。これから、停戦と、残りの人質に関する交渉が行われるとのこと。

アメリカとイスラエルは、ハマスに対し、「残りの人質を全員解放せよ。拒否するなら、イスラエルが、ハマス一掃作戦を開始すると、迫ることになる。」と強い圧力をかけるものとみられる。今の流れの中で、人質が全員解放され、停戦になる可能性が期待されている。

www.ynetnews.com/article/rkh68rxbee#autoplay

ただこれが、少なくともガザのハマスは殲滅すると言っていたネタニヤフ首相の思いと一致したものかどうかは不明だが。。。

何はともあれ、もう限界である。人質全員が、ガザから解放されるように。

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石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。