石のひとりごと:世界を揺るがすトランプ政権に頭よぎるゼカリヤ12章 2025.2.4

President Donald Trump and Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu shake hands at a museum in Jerusalem, May 23, 2017 [Sebastian Scheiner/AP Photo]

アメリカのトランプ大統領が、就任以来、物議を醸し続けている。そのトランプ政権は、世界的にも、イスラエルよりとみられている。その中で、アメリカとイスラエルをとりまく様子に、なんとなく、ゼカリヤ12章が頭をよぎったので、まとめてみた。

1)中東はどうなる?:イスラエルを背負う?アメリカ

ネタニヤフ首相は、本日、ウィトコフ中東特使と会談し、本日2月4日(火)、トランプ大統領と会談する。両首脳は、ガザ情勢や、今核兵器開発を急いでいるイランに関する対策を協議するとみられている。

ガザについて、トランプ大統領とネタニヤフ首相は、残りの人質を全部解放させることでは、努力するということでは、同意している。しかし、第二段階での完全な停戦について、両者の間には、まだ大きな溝がある。

停戦を推し進めたいトランプ大統領に対し、ネタニヤフ首相は、ハマスをガザから追放するか、もしくは完全に非武力化しない限り、停戦する気はない。むしろ、戦闘再開の可能性を模索しているところである。

この状況の中で、トランプ大統領は、サウジアラビアとの国交開始という大きな餌をもって、ネタニヤフ首相の説得、または圧力をかけてくると予想されている。

サウジアラビアとの国交はネタニヤフ首相も望むところである。しかし、そのためには、パレスチナ国家という概念にネタニヤフ首相も合意しなければならないという、大きな壁がある。どういう落とし所になるかが、トランプ大統領との交渉になるわけである。

しかし、いずれにしても、今回、トランプ大統領が、世界の首脳の中で、最初の首脳にネタニヤフ首相を選んだことで、すでに、中東におけるイスラエルの地位や見方が改善したともいわれている。

また、トランプ大統領は、前バイデン政権では保留になっていた武器供与、支援の再開も始めている。基本的に、トランプ政権下のアメリカは、イスラエル側に立っている、いわば、背負っている状況に見えると言えそうである。

2)アメリカが世界に嫌われる?:ここからも広がる反イスラエル感情懸念

トランプ大統領は就任以来、得意のビジネスマインドで、これまでの経済関係を覆すだけでなく、イーロン・マスク氏が、海外ヘの支援活動や支援金を差し止める動きを進めている。

トランプ大統領は、本日2月4日(火)より、カナダとメキシコからの輸入品に対する関税を25%にすると表明。両国からは、アメリカ商品をボイコットするといった反発が出た他、世界の株価がいっせいに下落するという混乱に陥った。

最終的には、両国とも、アメリカと交渉し、関税25%発動の数時間前というぎりぎりになって、それぞれアメリカとの合意に至り、新しい関税発動は、1ヶ月延期になった。両国にとっては、まだ終わりではないし、苦々しい思いは残っているだろう。

しかし、中国への関税10%上乗せ問題については、発動の予定で、中国は報復措置を宣言している。

この他にも、トランプ大統領は、ビジネスマインドで、損得を計算し、無駄をどんどん削る政策を推し進めており、こちらも混乱になっている。

就任後、まもなく、トランプ大統領は、WHO(世界保健機構)からの脱退を表明したが、しばらくして、中国とアメリカの間での不釣り合いな出資金を見直すなら、復帰も検討すると発表した。

イスラエルが国内での業務を不法としたUNRWA(国連パレスチナ難民支援機構)について、アメリカも出資を停止すると表明している。西岸地区、ガザ地区以外でも、パレスチナ難民がいる中東各地で対応が必要になってくる。

続いて、本日、発案はイーロン・マスク氏の発案とのことだが、トランプ大統領も合意したとして、USAID(アメリカ合衆国国際開発庁)を閉鎖すると発表した。

USAIDは、大きな災害の被害に遭っている地域への支援など、非軍事海外支援を行っている政府組織である。閉鎖になれば、支援活動に大きな影響が出ると予想される。

www3.nhk.or.jp/news/html/20250204/k10014711561000.html

トランプ大統領が言っていることは、間違いではないのかもしれないが、あまりに急激な変化で、世界を振り回しているようである。

こうなってくると、そのアメリカが支援しているイスラエルにもその憎しみが向けられるのではないかと懸念されるのである。

また、歴史を振り返ると、世界は、どうしようもない混乱がくると、それをユダヤ人のせいにして、ユダヤ人を迫害する、スケープゴートにする、という経過をたどっている。その最大の例が、ドイツでのホロコーストであった。

恐ろしいことに、世界は、すでに反ユダヤ、反イスラエル感情から、暴力にまで発展するケースが急増しており、ホロコースト前夜とも言われるようになっている。

そこへ、トランプ大統領の登場で、今後、世界各地で、それがさらに悪化する可能性が懸念されるのである。

3)災害続きのアメリカ

こうした動きをしているトランプ政権下のアメリカだが、ロサンジェルスでは、政権交代の少し前から、市街地が大規模に焼失する超大規模な山火事が発生した。鎮火まで約3週間かかり、死者は29人。焼失したエリアは、200万平方キロ(東京23区の3分の1)に及び、1万8000棟が焼失した。

www3.nhk.or.jp/news/html/20250202/k10014710041000.html

この地域に住んでいた人々は、裕福な人々が多く、多額の税金を納めていた人たちである。これからアメリカ政府にかかる経済的な負担は膨大であると思われる。

また、ここしばらくの間に、飛行機事故が相次いで3件も発生した。1月29日、ワシントン近郊で、民間機と軍ヘリコプターが衝突し、乗客乗組員全員の64人が死亡。

その翌30日後には、フィラデルフィアで、医療用小型機が墜落し、乗っていた乗客6人(子供含む)と地上で1人の計7人が死亡した。さらに、2月2日には、ヒューストンで、飛行機から火が出て、乗客100人が、緊急脱出する騒ぎになった。ひょっとしてテロリストが遠隔から何かしているのかと思うほど、続いた感じである。

世界は、ガザ問題で、ますますイスラエルを敵視し始めている。そのイスラエルを担いだように見えるアメリカは、さまざまな傷を受けているという感じである。

こうしたことから、これは石のひとりごとにすぎないのではあるが、ゼカリヤ12章が頭をよぎった次第である。

宣告。イスラエルについての主のことば。―天を張り、地の基を定め、人の霊をその中に造られた方、主の御告げ―見よ。わたしはイスラエルを、その回りのすべての国々の民をよろめかす杯とする。ユダについてもそうなる。エルサレムの包囲されるときに。

その日、わたしはエルサレムを、すべての国々の民にとって重い石とする。すべてそれをかつぐ者は、ひどく傷を受ける。地のすべての国々は、それに向かって集まって来よう。(ゼカリヤ12:1-3)

今というわけではないが、こうしたことの繰り返しで、いよいよイスラエルが世界から攻撃される時が来るのかもしれない。

その時、主がエルサレムに来られて、イスラエルを助ける。そうして、まずはイスラエル自身が大きな悔い改めを経験するのだろう。そのような絵が見え始めている昨今である。

その日、主は、エルサレムの住民をかばわれる。その日、彼らのうちのよろめき倒れた者もダビデのようになり、ダビデの家は神のようになり、彼らの先頭に立つ主の使いのようになる。その日、わたしは、エルサレムに攻めて来るすべての国々を捜して滅ぼそう。

わたしは、ダビデの家とエルサレムの住民の上に、恵みと哀願の霊を注ぐ。彼らは、自分たちが突き刺した者、わたしを仰ぎ見、ひとり子を失って嘆くように、その者のために嘆き、初子を失って激しく泣くように、その者のために激しく泣く。(ゼカリヤ12:8-10)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。