イスラエルでの感染拡大は、新たな感染者が1日に2000人近くという日々が続いている。29日の時点での有症患者は、3万5062人。このうち重症者は、328人。人工呼吸器利用者は100人前後、死者は、前日から5人増えて491人である。
感染拡大をおさえながら、経済活動を維持しようとする政府の動きが、どうにも中途半端で、二兎を追うもの一兎をもえず状態にあることから、市民たちの間で、政府、特にネタニヤフ首相への不信と反発が高まっていることはお伝えしている通りである。
こうした中、ネタニヤフ首相は、この問題を強力に引っ張っていく司令塔として、テルアビブのイチロフ(ソラスキー)医療センターのCEO、ロニー・ガムズ教授(54)を任命した。
ガムズ教授は、医師としてソラスキー医療センターの院長、また、保健省長官を務めたほか、大学でビジネスを学んで、医療事業の管理、法律にも明るい人物である。
ガムズ教授は、新型コロナで死亡する患者の尊厳を守るため、テルアビブでCEOを務める自身の病院で、死にゆくコロナ患者のそばに家族がいられるようにした。以下のビデオは、今年4月2日、ガムズ教授が世界中の病院がこれを実施するよう訴えているビデオクリップである。
ネタニヤフ首相は、このガムズ教授にすべてをたくしたようである。ガムズ教授が動きやすいように、ネタニヤフ首相が、かなりの権威を与えたことから、イスラエルメディアは、かつて絶対の権力を有したロシア皇帝のタイトルを使って、コロナのツァー、ガムズ教授と報じている。
<新型コロナはこうして打ち倒す>
ガムズ教授は、これからのコロナ対策を行うにあたり、まずはコロナ中央司令室を立ち上げ、検査から感染者の追跡、隔離をすすめて、感染経路を断つとした。このために、検査数は、1日に6万件とし、数週間後には10万件をめざす。
いわば、非常に大規模で徹底したクラスター対策を行うということだが、ニューヨークはこの方策で、大きな成果をあげている。
ガムズ教授は、イスラエル軍がこれを行うと発表した。イスラエル軍には、これを実施する技術力があるので、必ず感染経路を断ち切ることができると述べた。
また、情報を一箇所に集約して正確な現状把握を行い、社会活動をどう管理するかを検討する。非論理的なロックダウンはしないとガムズ教授は断言した。
同時に、国民には、マスク着用の重要性と、イスラエルではほとんど無視されているパーソナルディスタンスの維持の必要性を訴えた。ネタニヤフ首相は、「キーワードは”Together”(共に)」ということだと述べ、イスラエル人は共に戦って、必ずコロナを倒すと宣言した。
ガムズ教授のスピーチは、特に医療従事者の間で好評が出ており、今、イスラエルが最も必要なスピーチだったと希望と期待の声が上がっている。