戦没者記念日2025:昨年からの戦死者319人・テロ犠牲者79人 2025.4.30

Israeli soldiers and mourners observe two minutes of silence during the Memorial Day commemoration for fallen soldiers at the Mount Herzl military cemetery in Jerusalem on April 30, 2025. (Photo by Menahem Kahana / AFP)

昨年から戦没者319人・テロ犠牲者79人

イスラエルでは4月29日日没から戦没者記念日に入った。昨年の戦没者記念日から1年の間に戦死した兵士、警察官などは319人。ほとんどは、ガザ、レバノン、西岸地区での戦闘中に死亡していた。

加えて、これまでの戦争や紛争中に負傷し、障害を負い、その後に死亡した退役軍人は61人。1860年から国のために死亡した治安関係者の数は、2万5420人となった。

この日はまた、テロ犠牲者をも覚えられる。この1年でテロの犠牲となった市民は79人。1951年から数えると5229人である。したがって、今年の戦没者記念日に覚えられる人は、3万649人となった。

2023年10月7日以降のガザでの戦没者・犠牲者を覚えて

2023年10月7日以降、今に至るまでの戦闘という範囲での戦没者は、イスラエル軍兵士809人(3日前にも2人追加)、地元警備員39人、警察官70人、シンベト(国内諜報)10人となっている。

以下の記事の中にあるクリップは、ノヴァ音楽フェス襲撃直後に、現場に入った治安部隊の装着カメラからの様子。遺体が散らばる道路を進み、建物?らしきところに入ると、「死んでる、死んでる、みんな死んでる、警察だ軍だ、だれか生きているものは?生きてるものはいないか」と叫びながら進んでいる。

www.ynetnews.com/article/ryuk83ayxg#autoplay

この襲撃では、ほとんどがイスラエル市民の1200人が、まだ早朝の寝ている時に襲われた。幼児を含む家族ごと生きたまま焼き殺され、四肢や頭を切断され、女性は集団レイプされたあげくに殺された人もいるという残虐さだった。

さらに251人が拉致され、1年半以上になる今もまだ59人(生存24人)がガザにいる。世界はおそらく、ハマスのしたことがどれほど悪質な犯罪であったかを全く理解していないだろう。

戦争は今もまだ進行形である。今年の戦没者記念日には、過去のことでなく、自分ごとになった遺族たちが、複雑な思いで、この日を迎えている。

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以下はエルサレム旧市街の壁に映し出された戦没者の名前の様子

嘆きの壁・ヘルツェルの丘での国家式典

4月29日(火)日没午後8時からは、エルサレムの壁には戦没者の氏名が挙げられ、エルサレムの嘆きの壁広場で、国家記念式典が行われた。戦没者家族など3000人が出席した。会場には、人質の名前が書かれた空席も用意されていた。

以下はその式典の様子。最後は、45:00ぐらいからは、ホロコースト記念日と同様、神への祈りが捧げられ、その後に国歌になる。

イスラエル国内では、ずっと長く、最も感動を呼ぶことで知られる、イスラエル軍のチーフ・カンター(シナゴーグで会衆を代表して歌に合わせた祈りを捧げる人)シャイ・アブラハム氏が担当している。おすすめ。

この式典では、ヘルツォグ大統領と、ザミール参謀総長が講壇に立った。

1)ヘルツォグ大統領:分断に警告・特に治安関係部署は論争に巻き込んではならない

Ma’ayan Toaf (GPO)

ヘルツォグ大統領は、一つの家族から、2人以上戦死者を出した家族がいることについて、私たちにすべてを捧げた後、再び全てを捧げることになったと深い謝意を表明した。

その上で、私たちは、このように戦争の中に生きることは望んでいなかった。私たちは平和を愛する人々であることを、改めて明らかにしたいと述べた。

そして、それは外に対してだけでなく、うちに対してもだとし、私たちは、「憎み合うことは止めよう」と懇願し、国内にある深い分断に警告を発した。

また、イスラエル軍、シンベト、モサド、警察など、すべての治安維持部隊が、論争に巻き込まれることがないようにしなければならないと訴えた。

2)エイヤル・ザミール参謀総長:人質解放とハマス打倒を誓う

IDF

エイヤル・ザミール参謀総長(59)は、就任後初めての戦没者記念日となった。

ザミール参謀総長は、ネタニヤフ首相が、ガザでの戦闘において、この3月、強行姿勢に転換する前に就任した参謀総長である。

この日のスピーチにおいても、平和を訴えたヘルツォグ大統領とはうってかわって、ハマスへの警告ともいえる内容であった。また、国民に向かっては、現在怒っている問題に蓋をせず、直行で語りかける内容であった。

ザミール参謀総長は、まず、ハマスは、我々の人質奪回とハマス殲滅という目標への決意がどれほどのものか、見誤っている(我々は本気だ)と語った。

また人質家族に対しては、皆さんの声、また人質になっている家族たちの顔は自分の心に刻まれていると語り、全員の奪回するまで休むことなく、それを成し遂げるために、あらゆる方策を試みて成し遂げると強調した。

さらには、今も従軍を拒否し、治安部隊と衝突になっている超正統派に向かっては、「イスラエル軍は、市民によるぐんである。その働きを遂行するため、これまで以上の人手が必要になっている。

これは作戦上の必要であると同時に、将来を共にする国にとって、すべての市民が平等に担う必要でもある。

今は、国の独立、自由、治安維持に向けて、国民全員がストレッチャー(救急隊のベッド)の下に入って支える時である」と呼びかけた。

*IDFは、今軍は新たに1万2000人の兵士(うち7000人は戦闘部隊)を必要としていると表明している。

また、10月7日のハマス襲撃の際に、現場にいた治安部隊が、殺されたり、拉致されながらも戦ったことを上げ、自分もこの嘆きの壁の前で、イスラエルを守り、ここに我々が、安全に住む権利を守るという責任を果たしきることを誓うと述べた。

www.timesofisrael.com/stop-the-hatred-as-israel-marks-memorial-day-herzog-pleads-for-peace-within-society/

ネタニヤフ首相は、毎年のように、嘆きの壁ではなく、「ヤド・ラハミーム」とよばれる支援団体での記念式典、また翌日の4月30日午前中には、ヘルツェルの丘での記念式典に出席、メッセージを発した。

石のひとりごと

cemetery in Jerusalem on April 30, 2025. (Photo by Menahem Kahana / AFP)

イスラエルは選びの民と言われるが、彼らが通っている痛み苦しみを思えば、涙出る。

今、従軍を終え、日本に旅行に来ているイスラエル人男性は、初めて、ユニフォームではなく、イスラエルでもなく、この日をはるか地球の反対側で過ごすことの痛みを経験しているようだった。

この男性は、高校の友人をガザで失ったとのこと。ただ、このはるか遠い日本で、イスラエルを愛し、祈っている友人たちに会えたことで、心が強められたとも言われていた。

主がイスラエルとあわれみ、これまでのように、主ご自身が、イスラエルと今そこに生きるよう召されたユダヤ人たちを守り続けてくださるように。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。