変化する世界の現状とイスラエル:キリスト教23億人・イスラム教20億人・無宗教19億人(ピュー研究所)2025.6.10

ピュー研究所 青のエリアは、宗教を重要視している人が少ないエリア 日本は10%

ピュー研究所が6月9日、2010年から2020年の間に、世界の宗教がどう変化したかを発表した。

www.pewresearch.org/religion/2025/06/09/how-the-global-religious-landscape-changed-from-2010-to-2020/

*ピュー研究所:ピュー・リサーチ・センター

アメリカのワシントンDCを拠点とするシンクタンク。世界でも問題となっているような案件や傾向に関する情報をリサーチするNGO。2004年設立。

世界の宗教:無宗教“none”が3位

1)キリスト教23億人(28.8%):世界で減少傾向

それによると、キリスト教徒は、今もまだ世界最大で、2010年から1億2200万人増えて、2020年には23億人となっていた。

しかし、世界の総人口が、12%増えたのに対し、キリスト教徒の増加率は、人口増加率に追いついていなかった。このため、世界の宗教に占める割合は、1.8%下落して、28.8%だった。

キリスト教徒が最も多いのは、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸で、30.7%を占めており、ヨーロッパの22.3%を上回っていた。

これは、アフリカでの人口増加だけでなく、ヨーロッパのキリスト教離れが進んでいることを表しているとみられている。

全世界で、キリスト教徒だったのに離れた人は他宗教の3倍に上っていた。こうした中、キリスト教国は120カ国とされるが、41か国で、キリスト教徒の減少がみられた。特にアメリカでは、14%減、オーストラリアでは20%減と目立っていた。

本来、キリスト教国とされてきたヨーロッパの中には、総人口に占めるキリスト教徒の数が、50%以下になった国もある。イギリス49%、オーストリア47%、フランス46%である。

2)イスラム教20億人(25.6%):人口増加でキリスト教に迫る

一方、イスラム教徒の数は、2010年から3億4700万人増えて、20億人となった。21%増である。世界の宗教に占める割合は、逆に1.8%上昇して、25.6%となった。かなりキリスト教に追いついている。

3)“none”無宗教が3位:19億人(24.2%):日本は総人口比では57%・世界3位

1位のキリスト教、2位のイスラム教に続く3位は、無宗教であった。

「none(ナン)」と自認する人々で、2010年から2020年までの間に、2億7000万人増えて、19億人となった。

世界の宗教に占める割合は24.2%となり、実に世界の4-5人に1人は、無宗教ということである。35カ国でこの人々の数が増えていたとのこと。

Noneの最大国は中国で、2020年の時点で総人口の90%にあたる13億人が無宗教である。これは以前からのことで珍しいことではないだろう。

しかし注目されるのは、中国に続いて、noneが多い国が、アメリカであったということ。2020年時点で、アメリカのnoneは、1億100万人と2010年から97%増と、倍近くになったということである。

次に多いのは日本で、2010年から8%増えて7300万人。数ではアメリカより少ないが、国の総人口での割合で見ると、アメリカは30%だが、日本は57%とアメリカを超えている。

日本に続いて、noneが過半数になっている国は、オランダ54%、ウルグアイ52%、ニュージーランド51%、

4)その他

4位はヒンズー教、仏教はその次の5位で、2020年から1900万人減って、3億2400万人。割合も0.4%減って4.1%だった。

ユダヤ教徒人口:次の10年で50%になる!?

1)世界のユダヤ教徒1478万人(0.2%)

Jewish schoolchildren at Athénée Ganenou in Brussels await the arrival of President Isaac Herzog, January 25, 2023. (Lazar Berman/The Times of Israel)

ピュー研究所の調べでは、ユダヤ教徒は、2010年から2020年までに約100万人増えて1478万人となった。世界宗教の中の割合は、0.2%である。

ホロコースト以前の1939年のユダヤ人人口は1660万だった。戦後8年となった今もまだ回復していないということである。

なお、ピュー研究所のデータは、生物学的にユダヤ人と自覚しているだけでなく、ユダヤ教に文化も信仰もつながっている人の数である。

このため、イスラエルにユダヤ人と住んでいるが、無宗教noneだと自覚する50万人は含まれていない。

ユダヤ人人口を研究しているヘブライ大学のセルギオ・デラペルゴラ教授の調べによると、イスラエルでは、ユダヤ人人口が、毎年約10万人が増加しており、2024年1月の時点で1570万人となっていた。

このうち、ユダヤ人の46%にあたる678万人は、イスラエルに、39%の570万人は、アメリカに住んでいる。この他、フランス46万人(3.1%)、カナダ35万人(2.4%)、イギリス30万人(2%)となっている。

しかし、ユダヤ人の場合、ユダヤ人をどう定義するかが問題になる。生物学的に母親の筋を重視するイスラエルの法律で言えば、2480万人が、ユダヤ人と定義され、イスラエルへの移住の権利を有するとされている。

2)イスラエルの人口増のうちわけ

ユダヤ人は、世界各地とイスラエルに住んでいるが、ユダヤ人人口の増加は、イスラエルにいるユダヤ人の人口増が反映している。

ユダヤ人は、イスラエルにいれば多数派だが、外にいるときは、かなりの少数派で多社会からの圧力も多く、出産率は高くない。

Credit: Courtesy of the family

しかし、イスラエルでは、一夫婦が3人以上の子供を持つケースが多い上、多産なユダヤ教超正統派たちが最も多く住んでいる。

デラペルゴラ教授によると、イスラエルの出生率は先進国100カ国の中で最大で、どの国も追い付かないほどだという。

また、世界では、これまでの100年近く、特にヨーロッパでは特に、周囲に同化してユダヤ人としては生きていなかった人が60%であった。

しかし、同時に、外からの反ユダヤ主義、反シオニズムの圧力で、逆にユダヤ人のアイデンティティに戻される人、戻る人が同じぐらいになっているとデラベルゴラ教授は語っている。

デラペルゴラ教授(ヘブライ大学)

しかし、デラペルゴラ教授によると、2023年から2024年は、“移民赤字”だった。これはイスラエルに移住する人が増えた一方で、イスラエルから出た人(1年以上戻らない)の方が多かったからである。

2023年から2024年の間に3万人が移住したが、逆にイスラエルを出た(アリヤの反対のヤリダ)て、2024年12月までに戻らなかった人は、8万人だった。

逆に、この期間に海外から帰国した人は3万人、新たに移住した人が3万人だった。合計すると、移住という視点では、2万人赤字ということになる。

これはイスラエル史上初めてのことだった。原因は、政府が司法と対立して民主主義が危うい流れになってきたことと、2023年10月7日以降は特に経済へのマイナスの影響が大きかったことが原因とデラペルゴラ教授は見ている。

しかし、イスラエルでは、高い出生率とアリヤして移住してくる人も継続して増えている。

デラペルゴラ教授は、毎年0.5%増という、今のペースで増え続ければ、次の10年で、世界のユダヤ人の50%がイスラエル在住ということになると予想している。これは、大きな転換期になるとデラペルゴラ教授は語っている。

www.timesofisrael.com/muslims-are-worlds-fastest-growing-religious-group-jews-far-below-pre-holocaust-numbers/

石のひとりごと

ナン(無宗教)と呼ばれる人が増えていると聞いたことはあったが、その数が、19億人で、24.4%と世界宗教の3位になっていたことに驚かされた。

その最大の国が、キリスト教の最大国であるはずのアメリカであるということに驚かされ、また、その次が日本と、正式にピュー研究所の報告に、名指しで挙げられていることにも驚かされた。

そうした中で、イスラエルにユダヤ人がどんどん集められているということも現実であることも確かなようである。

人の心が冷えて、神から離れ、かつ、イスラエルにユダヤ人が集められている。以下の、イエス・キリストのことばを思わされた。

だが、これらの日の苦難に続いてすぐに、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。

そのとき、人の子のしるしが天に現れます。すると、地上のあらゆる種族は、悲しみながら、人の子が大能と輝かしい栄光を帯びて天の雲に乗って来るのを見るのです。

人の子は大きなラッパの響きとともに、御使いたちを遣わします。すると御使いたちは、天の果てから果てまで、四方からその選びの民を集めます。

いちじくの木から、たとえを学びなさい。枝が柔らかになって、葉が出て来ると、夏の近いことがわかります。

そのように、これらのことのすべてを見たら、あなたがたは、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。

まことに、あなたがたに告げます。これらのことが全部起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません。この天地は滅び去ります。しかし、わたしのことばは決して滅びることはありません。

ただし、その日、その時がいつであるかは、だれも知りません。天の御使いたちも子も知りません。ただ父だけが知っておられます。人の子が来るのは、ちょうど、ノアの日のようだからです。

洪水前の日々は、ノアが箱舟に入るその日まで、人々は、飲んだり、食べたり、めとったり、とついだりしていました。そして、洪水が来てすべての物をさらってしまうまで、彼らはわからなかったのです。人の子が来るのも、そのとおりです。

そのとき、畑にいるふたりといると、ひとりは取られ、ひとりは残されます。ふたりの女が臼をひいていると、ひとりは取られ、ひとりは残されます。だから、目をさましていなさい。あなたがたは、自分の主がいつ来られるか、知らないからです。

しかし、このことは知っておきなさい。家の主人は、どろぼうが夜の何時に来ると知っていたら、目を見張っていたでしょうし、また、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。

だから、あなたがたも用心していなさい。なぜなら、人の子は、思いがけない時に来るのですから。(マタイの福音書24:29-44)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。