和平交渉:イスラエルは”保留” 2014.4.26

パレスチナ自治政府が、ハマスとの一致にむけて合意したとの発表を受け、緊急閣議を開いていたイスラエル政府。ネタニヤフ首相と右派のベネット氏などが強硬な姿勢で和平交渉の終了を主張したのに対し、リブニ交渉担当・法務相は、将来に可能性を残すべきだと主張。かなり紛糾したもよう。

結局、「テロ組織のハマスが加わる政府とイスラエルは交渉しない。アッバス議長が気を変えて、この合意を破棄することを希望する。」との結論を出した。もしアッバス議長がハマスとの合意をあきらめた場合は、交渉を再開するということで、将来に多少の窓を開けた”保留”ということである。

イスラエルは、まもなく”自治政府が倒れてしまわない程度”の経済制裁を開始するとみられる。

<アメリカの対応>

ケリー国務長官は、「まだ和平交渉が終わったわけではない。」と言った。しかし、オバマ大統領は、アジア歴訪中の記者会見でこの件について質問され、アッバス議長とハマスの一致は、”助けにならない”とやんわり返答した。

また、「今回の交渉では双方、非協力的な動きが何度かあった。双方ともその気がないようだから、しばらく間を置いた方がよさそうだ。」と、若干”お手上げ”ムードだった。

オバマ大統領は強いことばを避けたが、ハマスはアメリカ政府が正式にテロ組織に指定している団体。そのハマスが関わっている政治組織への支援を続けることはアメリカにとっては違法にもなりうる。

アメリカ議会は、共和党も民主党もそろって、パレスチナ自治政府への支援を停止する方向で話し合いが始まっているという。(支援金は年間4億ドル)

今後は、アッバス議長が、実際にハマスと統一政府を立ち上げるのかどうかが焦点になってくる。もし統一政府が立ち上がるとすれば、6ヶ月以内の総選挙までの暫定政府で、ファタハもハマスも加わらない中立の形になるとみられる。

しかし、ファタハとハマスの間にはまだまだ決定的なへだたりがある上、ハマスがPLOの下におとなしく入るかどうかははなはだしく疑問。イスラエル人だけでなく、パレスチナ人の間でもこの合意に希望をおいている人は少ない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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