今日になり6月15日(日)夜に、イランからの弾道ミサイルの被害にあった、テルアビブ近郊、レホボトにある、ワイツマン研究所の甚大な被害が、大きく報じられた。
エルダド・ツァファル博士によると、イランのミサイルが建物2棟を直撃して甚大な被害をもたらした他、50の建物が、何らかの被害を受けたとのこと。死者なかったが、数十人が負傷した。
ワイツマン研究所は、イスラエルの初代大統領で、科学者でもあった、ハイム・ワイツマン博士が、1934年に設立した研究所で、4000人の研究者が研究を続けている。自然科学の分野で世界をリードする研究所である。
今回破壊された建物のうち1つは、まだ建設中でもあり空っぽだったが、もう一つは生物科学の建物で、45の研究室が失われた。
そのうちの一つは、ツァファル博士の心臓に関する研究室で、22年かけて収集してきた、動物や患者の心臓の組織、DNAやRNAのサンプルなどがあった場所である。
攻撃の知らせを受け、ツァファル博士たちが駆けつけると、破壊されずに残っているのを発見し、大事なサンプルの一部は取り出せたという。
しかし、それらはマイナス80度で維持しなければならないところ、別の冷蔵庫に運び込むまでには、室温にまでなってしまっていた。使いものになるかどうかはわからない。

また、発達神経生物学で、脳の発達のプロセスと、その混乱が自閉症や、ADHD、統合失調症などにどうかかわっているのかを研究しているオレン・シュルディナー博士は、ショウジョウバエをモデル生物として研究するツールを開発していたという
。非常に繊細な研究で、集めるのに17年かかったとのこと。これらが破壊された今、取り戻すことは不可能だという。ここの研究員は、これまでの全てを失ったということである。
しかし、さすがは世界規模のワイツマン研究所である。攻撃の2日後、ヨーロッパでは、権威ある研究評議会が行われ、総額7億2100万ユーロの助成金を受け取る12の研究所、科学者261人が発表された。
このうちの6研究所は、ワイツマン研究所だった。またライフサイエンス部門での81の助成金の中で4つはワイツマン研究所だった。
しかし、ツァファル博士や、シュルディナー博士たちとそのチームが、長年かけて積み上げた研究成果は、金で解決する問題ではない。この損失は、博士や研究者たちだけでなく、世界全体に膨大な損失なのである。
破壊された建物の前で、ツァファル博士は、イランにいる科学者はどう思っているのだろう。いつかイランの優秀な科学者たちにここに来てもらい、いつかここで一緒に研究をしたいと思うと語っている。