イスラエル外務省のストで、実現が危ぶまれていたローマ法王のイスラエル訪問だが、5月25、26日に決定。これにあわせて世界中のメディア関係者、法王とともに来る観光客は5万人とみられ、様々な準備がすすめられている。
今回の法王の訪問はわずか2日間。1日目はヨルダンから入ってベツレヘムへ。午後、ベツレヘムからヘリコプターでベングリオン空港へ飛び、そこからやっと正式にイスラエルへ入国。すでに翌日には帰国することになっている。
法王フランシスは、無駄を省くため、外交的訪問では、できるけだけ短期間に目的を達成することを目指しているという。
*イスラエル外務省のストは4月初頭に終了。海外の大使館も3日から業務を再開している。
<訪問の目的>
1)東西教会の一致
今回の訪問は、象徴的な訪問で、一言で言うなら、「東西教会の一致」。
現在は世界的に世俗化がすすみ、社会が乱れ始めている。今こそ東西の教会が一致して立ち上がり、破滅にむかっている世界を導かなければならないと法王は考えている。
*東西教会の一致とは?ーエキュメニズム(世界教会運動)
かつてキリスト教は一つだったが、ローマ帝国時代からのローマカトリックと、東ローマ帝国の正教会に大きく分裂した。いわゆる西方教会と東方教会への分裂である。
以後、西のカトリック(ローマ)と東の正教会(コンスタンティノープル・今のイスタンブール)は、どちらもが、自分たちこそ正統なキリスト教だと主張し、1054年には相互破門に至り、以来、全く交流を全くしない状態だった。
しかし、ちょうど50年前の1964年、当時の法王パウロ4世が、相互破門以来、初めて正教会総主教のアナシゴラスと会談し、エキュメニズム(世界教会主義)が始まった。今年は、その記念すべき会談からちょうど50年になる。
現在の総主教バルソロメオス1世は、昨年の法王フランシスの就任式に出席し、2014年、上記会談の50周年を記念して、キリスト教発祥の地、エルサレムで再開することを提案。その約束通り、5月にエルサレムで再開することになったという流れである。
バルソロメオス1世が率いる正教会は、ギリシャ正教、ロシア正教など、全世界にざっと3億人。カトリック教会の信者は12億人。
カトリック教会では、今回エルサレムでの法王フランシスと、正教会総主教バルソロメオスとの会談が歴史的な道しるべとなり、東西キリスト教会がさらに一致に向けて前進すると期待しているという。
*一致したイースター
ところで、カトリック(太陽暦)と正教会(正教会歴)のカレンダーは同じではないため、イースターは毎年日程がづれていた。しかし、今年は両者ともに同じ日程でのイースターとなっている。
2)イスラエルとの関係の向上
エルサレムのノートルダム・エルサレムセンターのソラーナ神父によると、法王フランシスは、故郷アルゼンチン時代からユダヤ人と大変よい関係を保っていたという。また法王が来る事で、観光客が大挙してイスラエルを訪問し、イスラエルの観光業にも貢献でき、関係がさらに向上するとソラーナ神父は語っている。
*カトリックは、今ガリラヤに大きなクリスチャンセンターを建築中で、将来観光の目玉になることをめざしている。今回、法王はそのプロジェクトの建物を祝福する事になっている(エルサレムでの祝福でガリラヤは訪問しない)。
3)地元クリスチャン(カトリック)への励まし
今回、法王は、世界中から来る信徒と交流する時間をとっていない。交流は、パレスチナ人クリスチャンに焦点をしぼっている。貧しさや政治事情で、法王が来ない限り、法王に会う機会がほとんどないからである。法王は、パレスチナ人クリスチャンの一般家庭を訪問することになっている。