ユダヤ人絶滅の危機は現代の問題:マーチ・オブ・ザ・リビングに元人質も参加 2025.4.25

Participants with Israel's flag walk along a rail track leading to the gate of the former Auschwitz-Birkenau Nazi death camp in Poland, during the annual March of The Living to honor the victims of the Holocaust on April 24, 2025. (Photo by Wojtek RADWANSKI / AFP)

ポーランドのアウシュビッツ・ビルケナウでは、4月24日(木)、今年もマーチ・オブ・ザ・リビングが行われた。

これはホロコーストで600万人が殺されたことを思いながら、強制収容所であったアウシュビッツから、ガス室があるビルケナウまでの3.5キロほどを歩くというプログラムである。

今年は終戦後80年前という記念すべき年だった。しかし、恐ろしいことに、世界は再び、ユダヤ人とその国イスラエルを憎むという、ナチス時代と同じ様子になりつつある。

ガザでの戦争が始まって以後、反イスラエルの空気は世界で悪化を続けており、イスラエルの存在事態を悪とみなすことが正当化される流れになっている。

今、世界は、第二次世界大戦前、言い換えればホロコーストが始まる前の様子に近づいているとも言われている。

Poland, on April 24, 2025, prior to the March of the Living (Wojtek Radwanski/AFP)

今年のマーチ・オブ・ザ・リビングには、イスラエルからヘルツォグ大統領、ポーランドからドゥダ大統領。

サバイバーたちとその家族に加えて、ガザでの元人質たち、その家族たちも加わって、参加者は、約1万2000人だった。マーチでは、「Bring them home(彼らを帰らせて)」との声も聞こえていたという。

イベントでは、元人質のエリ・シャラビさんがスピーチを行った。エリさんは解放された時、10月7日の時点で、妻も娘たちも全員ハマスに殺害されていたことを聞かされていた。

エリさんは、「ユダヤ人は、死ではなく、命をもっとも聖なるものとしている。紙には書かれていないが、その暗黙の合意を政府は守るべきだ。人質は全員家に帰るべきだ」と語った。

また、「私は、10月7日に妻と娘を失った。敵の捕虜となり、恐怖を通らされた。でも私は命を選ぶ。そのことが、毎朝私に希望となっている。毎朝、私の新しい人生を立ち上げる希望になっている」とも語った。

また元人質のアガム・バーガーさんが、ホロコーストで壊されなかった150年前製造のバイオリンで、シンドラーのリストを演奏した。

www.timesofisrael.com/former-hostages-survivors-and-the-bereaved-walk-together-in-march-of-the-living/

石のひとりごと

ユダヤ人たちの生き方で尊敬する一つの点は、どんなに不条理な目に遭わされても、そのことへの怒りに自分を破壊させないということである。

アウシュビッツにおいても、怒りの訴えは聞かれない。ただユダヤ人たちは、そのことは、忘れないというのである。

それは、いつか恨みをはらすためではなく、これからも同じようなことが起こるかもしれない。だから、それに備えよということである。

そうして、ユダヤ人たちは、「アム・イスラエル・ハイ(イスラエルの民は生きている)」と世界に発信する。常に危機に直面するが、イスラエルはなくならない。

人類3000年の歴史の中で、いったんなくなったのに、1900年の時を経て、また復活している国は、イスラエルをおいて他にはない。

そこに見えるのは、聖書の神、イスラエルの神、主は本当に神であるということ。イスラエルは、今も、これからもずっと、それを世界に発信し続けるのである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。