ミサイル攻撃断続的:ハイファでイスラム教モスクも被害:IDFザミール参謀総長が市民に戦闘長期化を警告 2025.6.21

Israeli security forces and firefighters work at the site after a missile launched from Iran struck in Haifa, Israel, June 20, 2025. (AP Photo/Baz Ratner)

断続的に続くイランのミサイル:ハイファで23人負傷

6月21日(土)イランへの攻撃が始まってから、8日目に入った。イスラエル軍は、イランの弾道ミサイル機能の約半分を無力化したと発表していたが、その後も、イスラエルへのミサイルは、夜昼かまわず、数時間おきといってもいいほどに続いている。

19日(木)、ベエルシェバのソローカ総合医療センターが直撃を受けたが、ベエルシェバでは、その数時間度にもまたミサイル攻撃があり、5人が負傷した。

20日(金)午後10時前には、全国的にアラームが鳴り、100万人がシェルターに走らされた。

発射されたミサイルは25発。ハイファに3発が着弾。23人が負傷した。(地図)

少年(16)が、飛んできた破片にあたって重傷を負った外、40歳、54歳の人が下半身に破片が当たる傷を負った。

20人は軽傷とのこと。イランは、幼稚園など、市民のいる地域にミサイルを放つようになっている。

またハイファでは、イスラム教のアル・ジャリーナ・モスクが、あやうく直撃を逃れたが、その衝撃で、建物に大きな被害を受けていた。

この建物は1775年に建てられ、1901年に改修がなされた歴史的な建物である。

この日は金曜日で、イスラム教の礼拝日である。通常なら200人近く来るところ、集会の人数制限が出ているため15人だけが来ていた。幸い、ミサイルは、祈りが終わって皆が帰った後に着弾したため、1人が軽傷を負っただけですんでいた。

イスラエルのサル外相は、この時の様子をSNSにアップ。「イラン政権は、イスラム教徒、クリスチャン、そしてユダヤ教拠点や、市民施設を攻撃している。これは、戦争犯罪だ」と訴えた。

また、この攻撃の際、カルミエルでは、シェルターに走っていて途中で倒れたヤリーナ・サドスキーさん(51)が死亡。心臓発作だった。

www.timesofisrael.com/at-least-23-wounded-by-iranian-missile-in-haifa-woman-dies-of-heart-attack-in-karmiel/

その後もミサイルは続いており、最新は21日(土)午前2時40分に、弾道ミサイル5発が発射され、テルアビブ周辺から北部でサイレンが鳴った。すべて迎撃したが、その破片が落ちてアパートの屋上が炎上したとのこと。

www.ynetnews.com/article/hyy2q00zvgg#autoplay

*戦闘開始1週間:6月20日(金)15:00時点での被害状況(GPO公式発表)

GPO(イスラエル政府プレスオフィス)による、6月20日(金)15:00時点で、イランからイスラエルに発射されたミサイルは450発以上。ドローンは400機。このうち、着弾して被害を受けた地域は50カ所以上。

損害を登録したケースは、3万735件。このうち、建物は2万5040棟。車両が2623件、その他が3006件となっている。

死者は24人。負傷者は1217人(重傷12人、中等度49人、軽傷1156人。自宅に帰れなくなっている人は8190人。

IDFザミール参謀総長が市民に長期化を警告

1週間になるのに、まだイランからのミサイルが続いており、人々はシェルターに出たり入ったり、入ったままの人もいる。

イスラエルでは、ネタニヤフ首相や、イスラエル軍も頻繁に、市民に向けてのメッセージを発射している。

こうした中、20日(金)、エイヤル・ザミール参謀総長が、イスラエル市民にむけ、イランの脅威を排斥しようとするこの戦いは、長引く、すぐ終わるものではないという見通しに備えてほしいと発表した。

イランの現政権は、長年、イスラエルを絶滅するための準備を積み上げていた。今飛雄しているミサイルは2500発。さらには驚くほどの増産能力があり、放置すれば、2年以内には8000発になると予想されていた。イスラエル軍は、これを放置するわけにはいかなかったと語った。

またイスラエルはこのためにも、過去20か月かけて、ガザ、レバノン、イエメンにいるイランの傀儡組織を、できるだけ無力化してきたとも語り、イスラエル軍もまた、長年かけて、この戦争のために準備をしていた。

今その時であると判断したことについて、もし遅れをとっていたら、将来の攻撃はもっと難しくなっていたと説明。今攻撃をしなかったら、歴史が我々をさばくだろうとも述べた。

イスラエル軍のサプライズの先制攻撃で、多くのイラン司令官を殺害、イランの核開発に重大な遅れを与えている。テヘランに続く空路の制空状況を獲得し、ミサイルとその発射値のほぼ半分を破壊した。そのうちのいくつかは、発射寸前だった。

「市民の皆さん、私たちは今、これまでになかったような困難を経験している。弱体化したイランは、今、あえて市民を攻撃している。

しかし、イスラエルのホームフロント(国内戦線:市民が国内で軍の一部として動くこと)は、IDFの強さのでもあり、弱点ではない。

今もなお、イスラエル国内の市民への攻撃が続いていることは、予測ずみのことだった。イランにはかなりの打撃を与え、敵は弱体化しているが、まだ終わってはいない。

まだしばらくは続くので、みなさんも、この作戦が終わるまで、油断することないようにしてほしい。私たちは共に、この作戦を勝利に終えると信じていると語った。

シェルターで一致するイスラエル人

イスラエルでは、イランへの攻撃について、批判する声は今の所、聞こえてこない。戦争前までは、非常に激しくネタニヤフ首相を批判してきた、ラピード氏や、ガンツ氏など、野党政治家たちも、ネタニヤフ首相を訪問して応援の意を伝えている。

市民にとって、シェルターに走る生活は楽なことではない。テルアビブの友人は、疲れ切った様子の子どもたちの様子を伝えている。

しかし、シェルターで今まで会ったこともない人と会話する機会もあって、イスラエル人の一致と強さを実感しているとのことだった。

メシアニックのトゥルーベック牧師は、シェルターで子どもたちのケアにあたっているとFBで報告していた。

また、ガイドの友人は、3日前まで、アフリカのアンゴラから来た福音派クリスチャンのグループのガイドをしていたが、エルサレムにいたとき、サイレンが鳴って、全員をホテルのシェルターに導いた。

そのグループは、そこで豪快にクリスチャンの賛美をしながら踊り始めたという。するとそこにいたユダヤ教超正統派たちが、何を歌っているのかもわからないのに、一緒に踊って騒いだとのこと。

友人は、イスラエル人であり、世俗派ユダヤ人だが、このいわば、無茶苦茶を面白そうに話ながら、「彼らはクリスチャンらから、何があってもすべて主の御手の中にあると思っているからね」と言っていた。なお、このグループは、陸路エジプトから帰国したとのこと。

今、シェルターの中にいる人々を覚えて、祈る時である。

石のひとりごと

昨日、エルサレム郊外に住む友人モニカさんとオンラインで話した。サイレンが鳴った直後であった。彼女は、家の中にシェルターがあるので、その部屋へ入るだけですむため、そこでまあまあ寝られているとのことだった。

しかし別の友人は、サイレンの旅に、家の外のシェルターには知らなければならない。これは大変だと言っていた。

モニカさんは、何が一番苦しいかといえば、やはり先が全く見えないということだと言っていた。今週末は、自宅待機になったのだが、この安息日明けの明日日曜も出勤するかしないか、まだわからないという。

仕事を失った人も多い。息子たちを軍に取られている人、海外に子どもたちがいて帰れなくなっている人もいる。ガザの人質の家族も、シェルターには知らなければならない。今はガザの人質のことを話す人はほとんどない。

ザミール参謀総長が、隠すことなく、まだこの状況がしばらく続くと市民に説明したのは、こういう中でのことなのである。日本人にこれが耐えられるだろうか。

苦難の中でこそ、「アム・イスラエル・ハイ(イスラエルの民は生きる)」と、言い続ける。助け合い、一致するイスラエル人の様子が伝わってくる。

この暗闇が、早くイスラエルから去っていくようにと祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。