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ヒズボラのトップにシェイク・ナイム・カッセム就任
イスラエルは、ベイルートで、30年以上、ヒズボラの党首を務めたハッサン・ナスララ党首を暗殺したあと、後継者と目されていたハッサン・サフィディエンも党首就任前に、殺害していた。
その後、党首なし状態が続いていたが、28日(月)、ヒズボラは、副総司令官だったシェイク・ナイム・カッセム(71)が、新しい党首に就任したと発表した。
ヒズボラは、1982年に、アマルという組織から分裂してできたテロ炉指揮である。カッセムは、アマルからヒズボラを創設した一人で、最初の指導者アッバス・アル・ムサウィの元で、副最高指導者の地位に立っていた。
1991年にムサウィがイスラエルに殺害された後、1992年にナスララが最高指導者となったときも、カッセムは副指導者の地位に留まり、今に至っている人物である。
この発表の翌29日(火)、イランのペゼシュキアン大統領が、カッサムのヒズボラ指導者への就任に対し、祝辞を述べた。
カッセムは、ナスララ党首が死亡した際の声明発表の時、汗をふきながら発表していた人物で、ナスララ党首ほどのカリスマ性はないと言われている。イスラエル軍では、仮の任命であり、そう長くはないだろうと見ている。
ところが、そのカッサムが、28日(月)、就任後初の演説(録画)の中で、ネタニヤフ首相私邸にドローンを到達させたことをあげ、「今回はまだ時でなかったかもしれない。しかし、ネタニヤフ首相を、演説中にもイスラエル人が殺すかもしれない」とその死を示唆する発言をした。
しかし、同時に、停戦交渉で、合意できる内容になれば、停戦に応じる構えは見せ、今の所そこには至っていないと語っていた。
アメリカ仲介・レバノンとイスラエルが国連決議1701の回復にむけた交渉:60日停戦なるか
ヒズボラは、ハマスを支援するという目的でイスラエルへの攻撃を行ってきた。しかし、イスラエルによるポケベル爆破で大きな被害を受け、ナスララ党首やその周囲の高官たちも死亡したことを受けて、ヒズボラは内部から崩壊し始めているとの報告がある。
同時にカタールで行われているハマスとイスラエルの交渉は、案の定なかなかすすんでいない。これを受けて、アメリカはまず、イスラエルとレバノン(ヒズボラ)との間に停戦を実現することを目指し始めたようである。
www.timesofisrael.com/flipping-approach-us-pursues-calm-in-lebanon-that-will-then-spread-to-gaza/
仲介は、アメリカから来ているホフスタイン中東特使。停戦案は60日で、国連決議1701の履行に持ち込むことを目標にするとのこと。(写真は今年1月のイスラエル訪問時)
60日以内に、イスラエルとレバノンの国境からリタニ川(最大30キロ)までの間に、いかなる武装勢力も存在しない状況にするということである。
この間、イスラエル軍は、南レバノン国境から撤退する。代わりにレバノン軍が入って、その地域のヒズボラのインフラをすべて破壊する。アメリカが議長で、欧米系諸国(イタリア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア)とUNIFIL、中東諸国の監視下に置くとされている。
イスラエルがこれに合意するかどうかは、まだわからない。しかし、レバノンのミカティ暫定首相は、30日(水)、ここ数日中にも合意が成立する、アメリカ大統領選挙までに、停戦が実現するとの期待を発表した。
とはいえ、実際の現場では、イスラエルとヒズボラの応酬はエスカレートしているので、楽観はできない。むしろ、バイデン政権が交代前に、ちょっとでもよい絵図を残しておきたいだけなのではとの懸念もなきにしもあらずである。