パームサンデーにロシアがウクライナ攻撃で35人死亡:ウィトコフ米特使とプーチン大統領会談後 2025.4.16

ロイター

ウィトコフ米特使とプーチン大統領3回目会談

St. Petersburg, Russia, Friday, April 11, 2025. (Gavriil Grigorov, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP)

アメリカはロシアに停戦させようと交渉を試みている。4月11日(金)、ウィトコフ米特使が、サンクトペテルブルグで、ロシアのプーチン大統領と、4時間にわたる直接会談を実施した。

ウィトコフ特使がプーチン大統領と会談するのは3回目であった。

停戦を急ぐトランプ政権に対し、プーチン大統領は、根本的な問題の解決が必要だと強硬な姿勢を崩さなかったと伝えられている。

言いかえれば、プーチン大統領のウクライナを支配下に置くという目標は変わっていないということである。

パームサンデーの朝ウクライナ東部スーミへ弾道ミサイル:35人死亡

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それを証明するかのように、この2日後の13日(日)パームサンデーの朝、ロシアはウクライナ東部のスーミ(ロシアとの国境から30キロ)を攻撃。子供2人を含む、市民35人が死亡。子供17人を含む117人が負傷した。

ウクライナによると、弾道ミサイル1発が、大学を直撃。1発は上空で爆発したとのこと。死者数を最大に増やす目的のクラスター爆弾の使用も疑われている。

以下はパームサンデーの礼拝中だったスーミの教会の様子

ロシアはスーミだけでなく、クルスク州へのドローンによる攻撃も続けている。オデッサで宣教を続ける船越宣教師夫妻によると、オデッサでもロシアからの攻撃は連日続いているとのこと。

一方、ロシアは、ウクライナは、13日の夜、ロシアにむけて52のドローン攻撃を行ったと主張している。

ゼレンスキー大統領は、ロシアは対話で戦争を止める気はないとし、テロリストにはそれに相応しい対応が必要だと世界に訴えている。またトランプ大統領には、交渉で何か一つでも決める前に、一度ウクライナに来て、ロシアの侵攻の現実を見てほしいと訴えた。

EUはロシア非難:トランプ大統領はプーチン大統領・バイデン前大統領とゼレンスキー大統領を非難

CNNによると、EUは、ウクライナがアメリカを通じて、停戦を受け入れ入れたにもかかわらず、ロシアは攻撃を逆に激化させていると非難。NATOのルッテ事務総長はウクライナを訪問し、「ロシアは侵略者であり、この戦争を始めたのはロシアだ」と述べた。

www.cnn.co.jp/world/35231732.html

しかし、トランプ大統領は14日(月)、スーミへの攻撃の後、プーチン大統領は、とんでもない間違いをしたと述べた。

しかし、悪いのはプーチン大統領、バイデン前大統領、そしてゼレンスキー大統領だと述べ、この3人のせいで、双方数百万人の死者が出たと非難した。

ゼレンスキー大統領については、戦争は勝つ確信があるから始めるのであって、国力が20倍の国と戦ったことを非難している。またそのために他国にミサイルを供給することを期待するのはおかしいとも述べた。

www.bbc.com/news/articles/cg5q0mev07lo

石のひとりごと:強者が勝つ世界が正当化される時代

トランプ大統領の理念でいくと、勝てないなら戦争はするべきでない。ウクライナはロシアに支配されることも仕方なしということである。

イスラエルはおそらく、これに近い考え方だったか、戦争が始まる直前ぐらいに、ベネット前首相がウクライナを訪問し、戦争ではなく、今のうちにうまく交渉で立ち回るべきだと伝えに行っていた。しかし、その時はもう時遅しであり、戦争を止めることはできなかった。

しかし、この時にウクライナが、ロシアとの交渉に回ったとして、確かに、戦争で、数百万の人々の命は失われなかった可能性はあるが、ロシアの暴力は恐ろしく、実際にはどうなっていたかはわからないだろう。また、ウクライナという国が、今ごろ存在していたかどうかもわからない。

要は、正義不正義ではなく、実質はどうなのかを見るというのが、ビジネス感覚である。しかしこれでは、強い国だけが生き残り、弱い国はなくなるものだという世界になってしまう。

トランプ大統領の言い分に、強者が勝つ世界が正当化される時代の到来を思い、なんとも恐ろしい気配を感じさせられた。ネタニヤフ首相はこの流れを察知しているのかどうかはわからないが、イスラエルを武力で守る方向へと邁進している。

しかし、これは、神である主の理念とは全く違う、人間の価値観である。神は強い者も弱い者も全部同じように見ておられる。やがて世界は戦争の大混乱に陥り、どうしようもなくなったところへ、主が戻って来られるのだろう。

それにしても、過越の時期であり、この価値観と正反対、イエス・キリストが、人類を救うために、自分を犠牲にして十字架にかかるためにエルサレムに入った日。その日に世界各地において、戦争があり、死ぬ人が出ている。時期からして、主からのメッセージもまたパワフルに感じるところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。