ネタニヤフ首相帰国:ガザでの人質虐待情報に家族たちが政府への怒り表明 2025.2.10

Prime Minister Benjamin Netanyahu chairs a cabinet meeting in Jerusalem on February 9, 2025. (GPO/Screenshot)

ネタニヤフ首相訪米から帰国

Avi Ohayon (GPO)

訪米していた、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領に始まり、上院、下院議員たちなど、重要な政治家たちとの会談を行い、約1週間の滞在を終えて、2月9日(日)に帰国した。

帰国して、わずか数時間後に、安全保障閣議を開催。改めてトランプ大統領との会談の結果、イスラエルの安全を何世代にも渡って保証できる成果があったと報告した。

この数ヶ月前まではありえなかったようなことが起こりうると述べ、決して誇張ではないと、興奮して語ったとのこと。

その詳細はまだ明らかにはされていない。また、現時点では、ガザから住民を全部移住させるという案に合意するアラブ諸国もその他の国もないというのが現状である。

ネタニヤフ首相は、まず今は、合意の第一段階を最後まで完了させることをめざすと述べた。ハマスが守るべきことは、北部ヒズボラと同じで、ガザにおいても、イスラエルとの国境には絶対に近づかないということだと述べた。

これを破れば攻撃を辞さない、攻撃を再開するということである。

www.timesofisrael.com/back-from-dc-netanyahu-says-trumps-gaza-plan-much-better-for-israel-than-alternatives/

第二段階については、11日(火)に話し合われるが、ハマスとイスラエルの間には大きな隔たりがあり、合意は困難とみられている。

ネタニヤフ首相は、右派政治家とともに。攻撃再開の意向を匂わせている。しかし、もしそうなると第一段階が完了したとしても、まだガザにいる65人はどうなるのか。

人質家族や支援者からは、とにかく、早く交渉するようにとの激しい反発が出ている。

まったなしの人質の悲壮な現状:家族からは政府に怒り

先週末解放された人質男性3人の衰弱した様子は、ホロコーストの強制収容所を思わせる様相で、イスラエル国内に恐怖と焦りを巻き起こした。

Israeli captive Or Levy after his release. Pic: AP

また解放された人質たちが家族に語っているガザでの様子が少しずつ、報道に出始めている。オール・レヴィさんは、ガザで捉えられていた491日間、ずっと裸足だった。

たシンワルの方針により、意図的な飢餓状態に置かれ、今日が最後になるかと思う日々だったという。

おそらく、ぎりぎり死なないようにする食糧しか与えられたなかったのだろう。

オールさんの家族は、こういう状態に置かれていることを、ネタニヤフ首相と政府は知っていたはずだと怒りを表明している。

また先に解放された人質たちを苦しめている思いが、なぜ自分が先だったのかということである。オールさんは、一緒にいた人質には4歳の子供がいるから、自分より先に解放するよう訴えたとのことであった。

しかし、その人ではなく、オールさんが先だった。そうして、3歳の息子に再会したのだが、オールさんは、この時に妻が殺されたことを聞かされていた。エリ・シャラビさんも、解放と同時に、妻と二人の娘、兄も殺されていたことを聞くことになっていた。

イスラエル人にとって、家族を破壊するこのような事件は、まさに耐えることが不可能な非人道的状況である。

また、この週末に解放された、エリ・シャラビさんと、オル・レヴィさんは、監禁中、まだ解放されていない、アロン・オヘルさん(24)と一緒だった。

2人の証言により、オヘルさんは、ハマスに拉致されてから492日目になるが、今も生きていることがわかった。

アロンさんは、22歳の時に、ノバ音楽祭に参加していて、ハマスに拉致され、今日2回目の誕生日を迎えて、24歳になる。

アロンさんは、目、肩、腕にも破片が入っているという重傷を負っているのに、手当てはされていないだけでなく、ずっと鎖で縛られていたという。

食べ物はほとんど与えられず、与えられても、1日にピタパン1枚があるかないかぐらいだった。

しかし、この状態にあってもアロンさんは、先に解放されていく2人に、自分の姉妹が誕生日を迎えるから、おめでとうと伝えてほしいとのメッセージを預けていた。家族は大変な励ましを受けたと語っている。

しかし、オヘルさんは、第一段階での解放予定者33人の中に入っていない。

アロンさんの母親のイディット・オヘルさんは、「息子がこんな目に遭っていることに我慢できる母親はいない。

またなぜこの2人が解放され、息子はまだなのか。どういう選択なのか。全く理解できない。」と語っている。

イディットさんは、この選定は、イスラエル政府が、ハマスに対して提出したものを基準にしていると、政府に対して激怒している。

家族はネタニヤフ首相と安全保障閣議に対し、「もう時間がない。第二段階に進んで、人質を全員とりもどさなければならない。それがあなたの道徳的な責任だ。アロンとすべての人質と取り戻すため、できる限りのことをする責任がある」と訴えた。

www.timesofisrael.com/hostage-alon-ohel-is-alive-but-wounded-held-chained-in-tunnels-family-says/

また、昨年8月に、トンネルの中で他の5人とともに、ハマスに殺害され、遺体となって帰国したハーシュ・ゴールドバーグ・ポーリンさんは、この週末に解放された、エリ・シャラビさんと、オール・レヴィさん、オハッド・ベン・アミさんと、10月7日に、同じ隠れ家から、一緒に拉致されていた。

開放後、オールさんが、兄ミハイルさんに、最初に聞いた事が、ハーシュさんはどうなったかということだった。

ハーシュさんは先に解放されたと思っていたのであり、昨年8月に、他の5人とともに殺されたことは知らなかったのである。

ミハイルさんは、すぐにハーシュさんの両親にこのことを伝えた。

これを受けて、ハーシュさんの両親は、ネタニヤフ首相や政府に対し、「人質の置かれている状況を思えば、もう第二段階とか第3回段階とか言わず、今週中に73人全員をとり返すべきだ。

戦争を終わらせよ。今あなたがただけがそれをすることが可能なのだ。」との声明を発した。

*人質について

第一段階で解放される33人のうち、これまでに16人が解放された。あと17人である(写真)。

Times of Israelによると、2月9日の時点で、まだガザにいるのは、この17人を含めて73人。このうち34人は死亡が確認されている。

www.timesofisrael.com/these-are-the-17-hostages-yet-to-be-returned-in-phase-one-of-gaza-ceasefire/

こうした中、ネタニヤフ首相はさっそく、汚職裁判の証言に立ったとのニュースが入っている。

医学的な課題も抱える中、ネタニヤフ首相(75)の立っている場所は、もはやストレスなどと、言うこともできないほどの場所である。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/netanyahu-returns-to-court-for-criminal-trial-testimony-says-he-is-facing-medical-challenges/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。