トランプ大統領がハマスに最後通告: 元人質5人と会見の後 2025.3.5 

A group of released hostages meets US President Donald Trump in the Oval Office on March 5, 2025. (White House/X)

トランプ大統領からハマスへの最後通告

トランプ大統領は、これまでからもハマスに、人質を全員解放しないと地獄を見ることになると何度も表明していた。しかし、これに応じず、ハマスは、第一段階で約束していた33人を解放するに止めた。

その後、イスラエルとハマスの交渉は頓挫しており、このままであれば、ガザでの戦闘再開は避けられなくなっている。

こうした中、トランプ大統領は、昨日の施政方針演説で、ガザ問題については、人質を全員取り戻すと表明。その翌日、執務室で、イスラエルから招いていた元人質8人と面会した。

その後、トランプ大統領はXで、ハマスに対し、「私はイスラエルに、この件を片付けるのに必要なものはすべて送っている。私が言ったようにしないなら、ハマスで無事でいられる者は一人もいないだろう」と最後通告した。

この言葉の通り、トランプ大統領が、就任以来、イスラエル110億ドル分の武器を提供、販売している。その中には、バイデン前大統領が、保留にしていた2000ポンド(907キロ)分の爆弾も含まれていた。

“シャローム、ハマス”これは、こんにちは、であり、さようならでもある。どちらにするか、決めるのはあなたたちだ。

人質全員を、後でではなく直ちに今、全員解放し、あなたが殺した人たちの遺体も返還せよ。さもないとあなたたちは終わりだ。

遺体を持ち続けるのは、病気か気が違っている人だけだ。あなたは、病気で気が違っている人たちだ!

私はイスラエルに、この件を片付けるのに必要なものはすべて送っている。私が言ったようにしないなら、ハマスで無事でいられる者は一人もいないだろう。

私はさっき、あなたがその人生を破壊した元人質たちに会った。これはあなたへの最後通告だ。ハマスの指導者に言う。まだチャンスがある今、ガザを出る時だ。

ガザの人々にも言う。すばらしい人生が待っている。しかし、人質を匿い続けるなら、それはない。あなたは死ぬ。だから賢い決断をしなさい。

人質をただちに解放せよ。そうでなければ、後で地獄を見ることになる。大統領ドナルド。J.トランプ

あなたは神が遣わした人だ:人質がトランプ大統領と面会・感謝を表明

イスラエルから招かれた元人質は、最近解放され、妻と娘たちを殺害されていたエリ・シャラビさん、オメル・シェム・トーブさん、弟との悲しすぎる別れの映像を使われたヤイル・ホーンさん。アメリカ人でもあるキース・シーゲルさんとその妻アビバ・シーゲルさんの5人。

5人は、アメリカ人大富豪が準備した飛行機でアメリカへ向かったという。3月4日、大統領執務室でトランプ大統領と面会。「あなたは神が遣わして私たちを助けた」と感謝を伝えていた。

5人は、トランプ大統領がいなかったら、解放されていなかったいっせいに賛同し、まだ残っている人質を解放してほしいと述べ、握手して短い訪問を終えていた。

石のひとりごと

トランプ大統領は、前期と違い、その交渉能力をフルで発揮している。恐れもなく、相手を脅すことも作戦の一つのようである。とはいえ、言うだけの人ではない。トランプ大統領は、実際に実行する人のようである。そこがまた恐ろしいところである。

トランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領とは口論に至り、その後、本当にウクライナへの武器支援を止めた。あわてたゼレンスキー大統領は、ヨーロッパの後押しを受けながらも、水面化でトランプ大統領との関係回復に乗り出している。

ゼレンスキー氏にとっては、大変なへりくだりを要したことと思うが、実際のところ、ウクライナと前線にいる兵士たちを助けるためには、アメリカの支えは必須である。

ゼレンスキー氏の動きを見て、今、トランプ大統領も、気を変える動きを見せている。口だけでなく実際にやる。しかし、状況が変われば、言ったことを変更する可能性も十分ある。まさに交渉のプロである。

イスラエルにとってもこのアメリカの支えは必須以上である。

実質思考のイスラエル人には、意地も恥もない。自国の政府や軍の力ではなく、トランプ大統領、あなたがいたから、人質が無事に戻れたとただただ感謝を述べている。神が使わされたとまで言っているのである。

ハマスはここからどう出るだろうか。ゼレンスキー大統領と違って、ハマスはガザ市民のことはまったく考えていない。逆に殉教することに価値を置いている組織である。

ガザには、まだ200万人近くの避難民が、瓦礫の中にいる。トランプ大統領が言う、地獄の蓋が開く結果になれば、大勢が命を失うという、地獄になるだろう。そんな結果にならないよう、ハマスが、この交渉によい反応をするように祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。