先週、イスラエルとパレスチナとの和平交渉再開にむけて双方が合意したとケリー国務長官は発表したが、それは双方無条件ではなかった。
イスラエルがパレスチナ人の囚人を釈放するかわりに、西岸地区でのユダヤ人家屋建築を停止しないという、取引があったもようである。
パレスチナのアッバス議長は、今、イスラエルが104人のアラブ人テロリストを実際に釈放した場合のみ、ワシントンでの第一回交渉に向かうと言っている。つまり、実際に和平交渉が再開するかどうかは、今イスラエルがこの条件をのむかどうかにかかっているということである。
ネタニヤフ首相は昨夜、釈放される予定とされる104人の名簿を発表。今朝の閣議で賛否を問う投票に賛成票を投じるよう、閣僚たちへの説得を続けた。
しかし、「テロリストは釈放ではなく殺すべきだ。」とまでいうナフタリ・ベネット経済担当相など少なくとも閣僚二人は、すでに確実に反対票を投じると明言している。閣僚だけでなく、ネタニヤフ首相自身のリクード党内でも意見が紛糾しており、意見がまとまらない状況が続いている。
午前中に予定されていた閣内投票は、午後になった今もまだ延期されたままである。
<ネタニヤフ首相から国民への手紙>
釈放される予定の104人は、皆1993年のオスロ合意以前にイスラエル人を殺傷したテロリストたちである。すでに20年以上、イスラエルの刑務所に服役している極悪犯ばかりで、終身刑の者も多い。
これらのテロリストらを釈放することは、イスラエル人にとっては、怒り、痛み以外の何者でもない。
すでに20年も服役したとはいえ、当時未成年で捕まった者もおり、まだ40才代に満たない者もいる。彼らがテロ活動に戻ることを止めるものはなにもない。
また特にツケを払うのは、これらの者に殺された犠牲者の家族である。家族たちにとって、犯人が刑期を終えないで釈放されることは耐え難い痛みである。家族たちは、今朝から首相府の前に集まって、犠牲者の写真を掲げ、テロリストを釈放しないよう、閣僚たちに訴えている。
それでもなお、この条件をのんで、和平交渉を再開し、外交による最後の解決案をやってみることがイスラエルの国益になるとネタニヤフ首相は、考えている。
もしうまくいけば、パレスチナとの正式離婚となり、もしうまくいかなかった場合でも、いよいよ外向的解決の可能性がななった、パレスチナ人には平和共存の意志がないということを、国際社会納得するしかなくなるというのだ。
ネタニヤフ首相は、昨夜、全国民に対して手紙を書いた。「テロリストの釈放に正義はない。これほどの不条理はない。しかし、国の指導者は時に、たとえ世論に反するときでも、国益にかなう決断をしなければならない。
シャリート兵士奪還の時も、昨年、ガザ地上戦を直前になってとりやめた時もそうだった。今回の措置がイスラエルに国益になると信じている。
しかし、この痛みを乗り越えて和平交渉が再開され、西岸地区から少しでも撤退するという事態になれば、国民投票を行うことを約束する。それは、国民全員が担うべき決断であり、一握りの閣僚で決めるものではないからだ。」
この国民投票については、テロリストの釈放を決める前に、今日、閣議で了承された。
<賛成を得るための妥協>
当初は、パレスチナ自治区在住で逮捕されたテロリスト82人の約束だったが、パレスチナはさらに、イスラエル国籍アラブ人(東エルサレム住民を含む)のテロリスト24人も加えて104人の釈放を要求している。
釈放したテロリストが西岸地区へ行くならまだましだが、イスラエル国籍のアラブ人テロリストを釈放するということは、イスラエル国内に犯罪者を解き放つことになってしまう。
閣僚たちの意見をまとめるため。今朝になりネタニヤフ首相は、イスラエル国籍アラブ人に関しては、別投票にするとして、まずはパレスチナ人テロリストに関する釈放だけに絞ったと伝えられている。
ネタニヤフ首相、正念場の決断をせまられている。今夜、ネタニヤフ首相、イスラエルの内閣を覚えてとりなしていただきたい。