テルアビブ・エルサレムで刺傷テロ/ 2人死亡 2014.11.11

<テルアビブで兵士刺され死亡>

10日午後、テルアビブの鉄道ハガナ駅付近で、イスラエル軍兵士アルモグ・シロニさん(20)が、所持していた銃を奪いに来たパレスチナ人ともみあいになり、ナイフで腹部を数回刺されて、出血多量の重傷となった。シロニさんは後に搬送先の病院で死亡した。

事件発生時、車で通りかかった男性市民(50)が、兵士が襲われるのを見て、車を降りて犯人を取り押さえようとしたところ、犯人はナイフを取り落として逃走。男性は、「テロリストだ!」と叫びながら追跡した。犯人は、数百メートル先で、警察に逮捕された。

犯人は、パレスチナ自治区ナブルス出身のアブ・カシヤ(18)で、違法にイスラエルに滞在していたパレスチナ人だった。

<エルサレム入植地で市民3人刺され、1人死亡> 

上記事件発生約4時間後、エルサレムとベツレヘムの間のグッシュ・エチオンので、ヒッチハイクポイントに立っていた3人がパレスチナ人に刺された。

刺された3人のうち、ダリア・レミクスさん(26)は、駆けつけた救急隊が蘇生を試みたが現場で死亡した。この他、20代と50代の男性が中等度から軽度の負傷を負っている。

3人目の50代男性は、車で通りかかって事件を目撃し、車を降りてテロリストを制止しようとしたところ、自分も負傷した。

犯人のマヘル・アル・ハシャムン(30)は、最初、ダリアさんら2人を車ではねようとして突っ込んだが失敗。車を降りて2人を刺し殺そうとしたもよう。ハシャムンは、グッシュ・エチオンのセキュリティに撃たれ、死亡した。

アル・ハシャムンは、ヘブロン在住で、イスラム聖戦に所属。2000年~2005年、投石、暴動によってイスラエルの刑務所に収監されていた。今回のテロにつては、イスラム聖戦が犯行声明を出した。

なお、事件が発生した場所は、6月に3人の少年が誘拐され、殺害されたヒッチハイクポイントから100メートルほどしか離れていなかった。

<タイベイで、男性リンチ寸前で救出>

エルサレムとテルアビブの中間にある町タイベイで昨日、ユダヤ人男性が、乗っていた車から引きずりだされ、「アラー・アクバル!(アラーは偉大なり)」と叫ぶアラブ人らに殴られ、リンチされそうになった。幸い、別の住民に救出されたが、男性の車はこの後、火をつけられ炎上した。

<警察の対策は?>

日常生活の中でテロが頻発しているが、警察はどうも後手にまわっている感がある。テルアビブの兵士が刺された現場では、アハロノビッツ治安相が現れると、人々が、「治安はどうなっている。テロリストを殺せ」と怒る場面もあった。

警察の公式スポークスマン・ミッキー・ローゼンフェルド氏によると、現在警察は24/7で警戒態勢を保っている。エルサレムでは、暴動が多発している東エルサレムのパレスチナ人の町は、監視バルーンが上空から監視している。怪しい動きがあれば、すぐに察知できるという。

また先週、イスラエル政府は、石や火炎瓶を治安部隊に投げつける行為も犯罪行為とみなし、20年を上限とする禁固刑を課すという法律を可決した。未成年であっても逮捕されれば、犯罪記録が一生ついてまわることになる。

ローゼンフェルド氏によると、今回の様々な暴動は、小さなスケールのものが頻発している状態で、未成年が関わっている率が高いというのが特徴。学校の行き帰りの時間帯に投石事件などが発生する傾向にある。

ここ2週間ほどの間に逮捕された200人のうち、71人が未成年(18才以下)だった。こうしたことから、警察は今のところ、深刻なインティファーダではなく、青少年の問題としての捉え方をしているという。

今日の2件の刺傷テロ事件については、組織的、計画的なものではなく、単独・突発テロ行為である可能性が高い。これはすなわち、予兆がまったくなく、特定の団体を非難することもできず、対処が非常に難しいということを意味する。

また、時間が経ち、犠牲者が増えるにつれて、ユダヤ人の間にアラブ人に対する怒りが高まりつつある。西岸地区ナブルス近郊のフワナでは、パレスチナ人と入植地ユダヤ人が互いに石を投げつけ合って、治安部隊が双方を落ち着かせるという事態になったところもある。

ネタニヤフ首相は、アッバス議長がテロを激励するような発言をしたために、パレスチナ人が暴挙に出ていると、アッバス議長を非難している。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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