シリア暫定政権治安部隊がドルーズ族17人殺害:イスラエルがダマスカスの大統領官邸付近攻撃で警告 2025.5.2

Druze gunmen stand next to their sect's religious flag at a checkpoint at one of the Jaramana suburb entrances, after clashes in the area between members of the minority Druze sect and pro-government fighters, in the southern suburb of Jaramana, Damascus, Syria, April 30, 2025. (AP Photo/Omar Sanadiki)

4月29日(火)、シリア領内にいるドルーズ族が、暫定政権の治安部隊と名乗る過激スンニ派の組織に襲われ、シリア全国で17人が死亡する事態となった。

以下はダマスカス近郊のドルーズ族居住地を襲うシリア“治安部隊”の様子

ドルーズとの衝突の最初のきっかけは、ドルーズの祭司が、イスラム教スンニ派が、最も重視するモハンマドをバカにするような言葉が含めた祈りを、SNSで公に流したためと言われている。

しかし、それ以前に、ドルーズが、誰であれ、支配者に従順であるため、前のアサド政権にも従順であったことも敵視される原因である。

ドルーズたちは、これはドルーズ全員の考えではないと主張したが、もう時遅しである。シリアでは、ダマスカスを中心に、反ドルーズデモが発生。スンニ派からなる暫定政権の“治安部隊”に他の武装勢力も加わって、ドルーズへの攻撃が拡大している。

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シリアでは、アブ・ムハンマド・アル・シャラア暫定大統領(42)による暫定政権が、国家統一と多様性の寛容な国の形成を目指している。

しかし、13年にわたる内戦で、シリア領内には、ありとあらゆる対立するイスラム勢力が存在しており、特に過激派を取り締まることは難しい。

シャラア暫定大統領自身は、元アルカイダのスンニ派である。そのため、その政府の治安部隊の中には、スンニ派以外の人々を簡単に殺すという過激な者もいる。

暫定政権はこれを十分に取り締まれていない。暫定政権は、今回の襲撃は政府の意思ではないと言っているが、この混乱を取り締まれる様相にない。

Majdal Shams in the Golan Heights on April 30, 2025. (Jalaa MAREY / AFP)

ドルーズ族は、ゴラン高原などを中心に、イスラエルにも14万人いる。同胞の危機を受けて、イスラエルに対し、デモをして、イスラエルに支援を要請した。イスラエルはドルーズの保護を約束したからである。

www.timesofisrael.com/israel-carries-out-warning-strike-in-syria-in-defense-of-druze-minority/

イスラエルは、30日、シリアの首都ダマスカスの大統領官邸のすぐ近くで、ドルーズ攻撃を準備していた武装勢力に対し、ドローンによるミサイル攻撃を実施した。1人が死亡したと伝えられている。

その後、ネタニヤフ首相と、カッツ国防相もこれを認めると発表した。シリアの暫定政権に対し、ドルーズへの攻撃は認めないと警告した形と言われている。

今後、イスラエルがどのぐらい関与してくるのか、イスラエルにシリアからの攻撃があるのかなど、注目されている。

www.timesofisrael.com/israel-strikes-target-near-damascus-presidential-palace-in-message-to-syrian-regime/

*ドルーズ族
ドルーズ族とは、イスラム教を土台にして出てきた宗教に基づく人々である。イスラムからは異端とみなされている。ドルーズ族は、国土を持たない民族で、シリアだけでなく、イスラエル、レバノン、トルコにもまたがって住んでいる。

Druze have been serving in the IDF since the state was born.
(photo credit: DRUZE VETERANS ASSOCIATION)

基本的に、在住する国に従順であるので、イスラエルに住んでいるドルーズは、イスラエルに忠実である。

このため、普通の市民として、イスラエルの大学で学び、イスラエル軍に従軍して、活躍する人も多い。

一方、シリアにいるドルーズは、これまでシリアのアサド政権に従順だったので、イスラエルには敵対していた。しかし、今、そのアサド政権もいなくなったので、シリアにいるドルーズたちは居場所を失った様相にある。

その人々の中には、イスラエルに親族がおり、クネイトラをイスラエルが、打倒アサドの時に、ゴラン高原、クネイトラ周辺を緩衝地帯として制覇して以来、イスラエルの親族と合流したドルーズもいる。

以下は、今年3月、イスラエルの同胞を52年ぶりに訪問する、約100人のシリアのドルーズたち

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。