国際社会とイランとの間で、イランの核の問題が話し合われているが、この結果による直接の影響を受けるのは、イランと実際に現地で対峙しているイスラエルと、湾岸諸国である。
サウジアラビアと湾岸諸国もイスラエルと同様、いかなる形であっても、イランへの経済制裁が緩和されることに危機感を持っている。サウジアラビアは、ウイーンでの会議に関わるべきであるとの声を発していた。
こうした中、イランとサウジアラビアが、4月9日にイラクのバグダッドで、直接の会談を行っていたとのニュースが流れた。イランとサウジアラビアはどちらも否定しているが、多数のメディアがこれを伝えている。
www.timesofisrael.com/iran-saudi-arabia-said-holding-direct-talks-to-mend-regional-rift/
イランはシーア派で、サウジアラビアはスンニ派なので、同じイスラムでも昔から対立する者であり、ともに対話することはほぼあり得ない国々である。加えて、イランとサウジアラビアは、2015年から、イエメンの内戦に介入し、それぞれ対立する勢力を支援する形で、軍事的交戦状態にある。
イランは、イエメンでクーデターを起こして内戦のきっかけとなった反政府勢力・フーシ派を支援。サウジアラビアは、フーシ派と戦うイエメン政府を支援している。イランとサウジの国交は2016年依頼途絶えたままである。
対話の内容については、イエメン内戦に関することと思われるが、ウイーンでの会議に関することや、アフガニスタンからの米軍撤退なども含まれたかもしれない。今は、何が話し合われたかの詳細な報道はない。
なお、イエメン内戦については、バイデン大統領が、国内の悲惨な人道危機に対処するため、すぐにも内戦を停止しなければならないと述べ、サウジアラビアへの軍事支援を停止。
同時に、フーシ派との距離を縮めて、イエメンへの人道支援が行えるようにしたところである。しかし、アメリカが、サウジアラビアへの軍事支援を止めるやいなや、イランからサウジアラビアへの攻撃が続いたことは記憶に新しい。
またアメリカは、ジャーナリスト、カショギ氏殺害の件で、サウジアラビアのモハンマド皇太子を糾弾する態度をとっており、アメリカとサウジアラビアの関係は急速に冷えていると思われる。
そうした中で、イランとの対談ということなので、これもまた中東の勢力図を変える一歩になりうることかもしれない。イスラエルにとっては、湾岸諸国とのアブラハム合意にサウジが加わることが希望であったので、サウジとイランの接近は、あまり好ましい動きではないだろう。
www.aljazeera.com/news/2021/4/18/saudi-iranian-officials-held-talks-to-patch-up-relations-report
<アメリカのアフガニスタンからの撤退との関連は?>
バイデン大統領は14日、正式に、アフガニスタンに派遣している米軍を9月11日までに完全撤退させると発表した。これに伴い、NATO軍も撤退する見通しとなった。
多発テロからちょうど20年。これまでに、アメリカは膨大な戦費と、米軍兵2000人をこの駐留で失った。アフガニスタン人の死者は10万人である。
しかし、アフガニスタンでは、政府とタリバン(過激派組織)もまだ健在で、平穏にはほど遠い状況にある。米軍、NATO軍の撤退で、タリバンをはじめとする過激派が、現地で、勢力を伸ばすと懸念される。
また、タリバンは、スンニ派なので、本来イランとは敵対しているのだが、イランはアフガニスタンに駐留していた米軍を攻撃するため、タリバンを支援していたとの情報がある(CNN)。同様の支援は、ロシアも行っていたとニューヨークタイムスが伝えている。
www.afpbb.com/articles/-/3299623
www.nytimes.com/2020/06/26/us/politics/russia-afghanistan-bounties.html
アフガニスタンから米軍が撤退すると、いよいよロシアからイランにかけての道筋ができてしまうことになりうる。ゴグ・マゴグの戦いへの一歩だろうか。
アメリカとの関係が微妙になっているサウジアラビアに何か考えがあるのだろうか。次回はロシアの動きも含めてお伝えしたい。