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ガザ地区の封鎖が始まって3ヶ月。ガザではいよいよ食糧や医薬品が底をつき、まもなく深刻な人道危機状態になると言われている。
OCHA(国連人権問題調整事務所)による食糧配布は、3割が活動を閉鎖。NGOのWCK(ワールド・セントラル・キッチン)は、毎日13万3000食の炊き出しをしていたが、5月6日に停止に追い込まれた。
ハマスが食料を略奪して販売しているので、その値段は高騰しており、小麦25キロが、約6万円と、2月末から30倍というクレイジーな状態になっているとのこと。
アメリカのガザへの支援物資搬入計画:国際社会は受け入れず
こうした中、ハッカビー在イスラエル米大使が、アメリカは、ガザに人道支援物資を搬入する計画があると発表した。イスラエルはこれに合意している形である。
それによると、イスラエルがおよそ制覇しつつあるガザ南部のラファに近い、フィラデルフィ回廊と、イスラエル軍が最近設置したもう一つのモラグ回廊の間に、安全な配布所(SDS)を4カ所(1カ所あたり30万人対応)設置し、民間警備業者が配布作業を行うという案を進めていると発表した。
つまり、物資を持って回るのではなく、ガザの人々に取りに来てもらうという方法である。
この計画を進める組織として、ガザGHF(人道財団)も設立された。この財団は、イスラエルもハマスも関わらないでガザの支援活動担う組織で、イスラエルもその設立に深く関わっているとのこと。
しかし、イスラエル軍は配布そのものには関わらない。ただ配給所にハマスが入ってこないように、監視は行うとハッカビー氏は語っている。
www.timesofisrael.com/us-envoy-says-gaza-aid-mechanism-to-take-effect-soon-denies-rift-with-israel/
しかし、このやり方では、実際には、200万近いガザ市民のうち、最大でも120万人、総人口の60%ぐらいにしか、物資が届かないと推測されている。
また、人々がとりに来なくてはならず、すぐに120万人に届くことも疑問視されることから、実効性は薄いと言われている。
国際社会は、基本的に、イスラエルが搬入を全面的に解禁することを求めているのである。このため、OCHAはすでに、このシステムへの参加は拒否を表明。
WHOは、イスラエルとハッカビー米大使が、物資を搬入しても、ハマスなどが横領していると訴えていることを否定し、このシステムを批判した。
www.bbc.com/japanese/articles/cn84jjngd5po
また、イスラエルは、UAEに対し、ガザ人道支援財団(GHF)への財政支援を要請したが、UAEはこれを明確に拒否した。この計画にとって大きな打撃になったと言われている。
アメリカとイスラエルが案を出したが、国際社会には拒否されており、前には進みそうもないと言えそうである。
ガザから出たいガザ市民49%:3月以降出た人はわずか600人
トランプ大統領は、今年2月、ガザ市民全員が、第三国に移動するビジョンを提示し、世界を驚かせた。イスラエルもこれに合意し、ガザからイスラエル南部のラモン空港に移動させ、そこから第3国へ移動させるといった、具体的な移動への支援を開始している。
エジプトによると、2023年11月から2024年5月までの間に、10万3000人が、ラファ検問所を通過して、ガザを出ていた。病人や負傷者が多いが、エジプトが、膨大な金をとって、ガザから入国させたケースも多いと言われていた。
その後、今年2月から3月17日までの2回目の停戦中に、4259人の病人、負傷者とその家族が、治療目的で、ガザから出たが、3月以降、現在までにガザから出た人は、わずか600人にとどまっていることがわかった。
しかし、この5月初頭に行われた、パレスチナ人による世論調査によると、ガザから出るために、イスラエルにその申請をしたいと答えたガザ市民は、半分近い49%と半分近くにのぼっていることがわかっている。
出たくても出られないのは、受け入れ国がないことがまずあげられる。ガザはもはや、瓦礫でしかなく、物資の搬入の見通しもない。これから暑い夏に入れば、水もなく脱水や、伝染病も拡大する。
それでも、積極的に受け入れるアラブ諸国はない。ハマスの悪は、イスラエルと、ガザの一般市民の上にまず大きくのしかかっている。