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トランプ大統領とネタニヤフ首相が会談後共同記者会見
2月4日(火)夜、トランプ大統領とネタニヤフ首相は、ホワイトハウスにて、約1時間の会談を実施した。以下はホワイトハウスにネタニヤフ首相が到着し、トランプ大統領に迎えられる様子。一部イスラエル・メディアの質疑を受けている。
その後、2人の首脳は、共同記者会見を行った。記者会見に集まった記者は、約200人。内容が劇的だったためか、質疑はかなり紛糾した様相であった。
会見の始まりにおいて、トランプ大統領とネタニヤフ首相は、双方ともに、アメリカとイスラエルの友好関係を強調。
特にネタニヤフ首相は、トランプ大統領が、アメリカ大使館をエルサレムに移動し、ゴラン高原のイスラエルの主権を認めたことなどをあげ、歴代アメリカ大統領の中で、最もイスラエルに友好的な大統領だと述べた。
ネタニヤフ首相が共に立つ中で、トランプ大統領が表明した内容、つまり、アメリカとイスラエルが合意したポイントは、以下の通りである。
1)ガザの人質は全員解放させる・停戦については自信ない
トランプ大統領は、人質は必ず全員解放になるとの確信を述べた。今まだ交渉中の第2、第3段階へと進んで、戦闘再開にならないと思うかとの質問に、トランプ大統領は、そうなると思うが、どうなるか見ていこうと述べた。
言い換えれば、アメリカはイスラエルの方針を支持する、戦闘になる可能性も否定していないということである。次項に関連してくるが、戦闘再開になれば、ガザの破壊がすすみ、ガザ市民がガザから出やすくなるので、トランプ大統領としては、どっちでもいいというところなのだろう。
2)ガザ地区の市民180万人はまともな場所へ移住させる
トランプ大統領は、ガザ地区の破壊は壮絶であるだけでなく、瓦礫の中に不発弾が数万発あり、もはや地獄だと述べ、人が住める場所ではないとして、ガザ市民(180万人)全員、ガザから別の場所へ移住してもらうと述べた。
また、「ガザでは、あまりにも多くの人が死んでいる。戦いの繰り返しだった。もうこれ以上、同じことを繰り返さないようにしたい。ガザ市民には、この悪循環から解放されて、別の死ぬ心配のない、よりよい場所で、それぞれの人生を送ってもらいたい」と語った。また、もし選択肢があるなら、ガザ市民はガザに戻りたいとは思わないだろうと語った。
どこへ行くのかについては、今は、受け入れを拒否しているエジプト、ヨルダンがきっと受け入れるとの楽観と、その他の複数の国(アメリカ以外)も検討していると語った。またこれにかかる費用については、裕福な国々から提供されると語った。
ガザ市民が出ていったあとに、イスラエルの右派たちがガザに入ることについては、だれもガザに住みたいとは思わないだろうと、これを否定した。
3)ガザの再建と雇用の創出はアメリカが行う・ガザは国際保養地になる
トランプ大統領は、ガザ市民が出ていった後、アメリカが、ガザの瓦礫や不発弾をクリーンアップし、新たな国際都市にすると述べた。そこで多くの雇用を創出し、パレスチナ人を含むあらゆる人々が住む。ガザは、素晴らしい地になるとのビジョンを語った。
これに対し、ネタニヤフ首相は、イスラエルは、ガザにハマスの存続を受け入れることはできないと述べ、これは、ヨーロッパで戦後再建にナチスがいるべきでないというのと同じだと述べた。
イスラエルの目標は①ガザのハマスの無力化、②人質の全員解放、③ガザが2度とイスラエルの脅威にならないことだと述べ、ネタニヤフ首相は、イスラエルが、望んでいるのはこのことだが、トランプ大統領は、はるかに上のビジョンを見られているようだと語った。
4)西岸地区はどうなる?(たぶん)4週間以内に発表する
ガザ地区について、非常に大きなビジョンを語っているが、では、ガザ地区についで、殺し合いになっている西岸地区についてはどうするのかとの質問が出た。
これについては、サウジアラビアとイスラエル国交開始にも関わってくる問題である。イスラエル国内では、ネタニヤフ首相が、サウジアラビアとの国交を得るために、なんらかの譲歩するのではないかと、特に右派勢の間では懸念が広がっている。トランプ大統領は、意味ありげに、4週間後に発表すると述べた。
4)中東を平和にする:アブラハム合意、イランとサウジアラビアについて
トランプ大統領は、過去4年のバイデン政権で、世界、特に中東は混乱したと述べた。特に核兵器開発に関する国際合意はあり得ないものだったと酷評。イランへの経済制裁緩和も非難した。
イランは、ハマス、ヒズボラ、シリアのアサド政権など多くの傀儡組織を失っただけでなく、イスラエルの攻撃で、防空能力を失っている。イスラエルとアメリカの攻撃を懸念してか、急遽、核能力を持つ兵器を開発していると報じられている。
こうした中、トランプ大統領は、ネタニヤフ首相との会談の直前に、イランへの経済制裁を再開する大統領令に署名した。これについて、トランプ大統領は、イランが憎いとかではない。イランには素晴らしい国民もいる。ただイランに核兵器を持たせない。それだけだと語った。
また、イスラエルとアラブ4カ国の国交と取り次いだ、アブラハム合意も、過去4年間、停止していたと指摘。これから、アブラハム合意を拡大していき、中東に平和をもたらすと述べた。
特にイスラエルとサウジアラビアの国交について、サウジアラビアは、パレスチナ国家設立をその条件にはしていないと語った。(会見前非公式記者会見にて)これについて、サウジアラビアは否定している。
www.jpost.com/israel-news/article-840662
www.timesofisrael.com/liveblog-february-05-2025/
www.ynetnews.com/article/sjlxfulykl#autoplay
ハマスは地域の紛争を悪化させると反発:サウジアラビアもガザ移住案否定
ガザから市民たち全員を立ち退かせるという、トランプ大統領の発言について、ハマス幹部のサミ・アブ・ズフリは、不条理であり、ばかばかしい案だと述べ、逆に地域の紛争を激化させるだけだと述べた。
またサウジアラビアは、パレスチナ人を彼らの地から追い出そうとする試みは拒否するとの声明を出した。また、トランプ大統領が、サウジアラビアが、イスラエルとの国交開始にあたり、パレスチナ国家設立には固執しないといったことについて、明確にこれを否定する声明を出した。
前のトランプ政権の際、サウジアラビアとイスラエルは国交開始に、かなり近づいていた。そうした中で、トランプ大統領が消え、バイデン大統領と、サウジアラビアの関係は冷えこむこととなった。
サウジアラビアは、逆に敵であるはずのイランに接近することになったのである。またガザでの戦闘が始まり、サウジアラビアは、スンニ派アラブ諸国の代表格の国として、パレスチナ国家設立を全面に出さないわけにはいかなくなっている。
また、トランプ大統領のパレスチナ人をガザから移動させるという案は、ハマスだけでなく、パレスチナ人の間で、「ナクバ」との認識になっている可能性がある。
「ナクバ」とは、大惨事という意味で、イスラエルが建国したことで、パレスチナ人が住む場所を奪われたことを意味する。イスラエルの建国記念日をパレスチナ人は「ナクバの日」と呼んでいる。
ガザからパレスチナ人を移動させることが、ナクバだと認識されるなら、ハマスが言うように、地域の紛争は激化するということである。
*参考までに:ガザとはどんな地域かをまとめた記事
mtolive.net/ガザとは?:聖書時代にさかのぼる対立とユダヤ/
石のひとりごと
トランプ大統領の案は、アメリカンメンタリティでは、素晴らしい案かもしれない。しかし、それがガザのパレスチナ人に当てはまるかどうかは、どうにも怪しい気がする。
ガザのパレスチナ人たちも人間なので、確かに自分らしい、落ち着いた生活を望んでいるとは思うが、もうすっかりハマスに染まっている人々である。
イスラエルの攻撃で家族や家を奪われた人々が、イスラエルを滅亡させるという、宗教的にも支えられた目標を横に置いて、他国での新生活を楽しめるだろうか。
それを一番知っているネタニヤフ首相はどう思ったのだろう。イスラエルのメディアの中には、会談前、トランプ大統領の横で、ネタニヤフ首相がどうにも落ち着いていないように見えたとの記事もあった。
また、こういう状況で、もし仮に、ガザの人々がこれに同意して、他国へ移住した場合、イスラエルへの憎しみやテロ活動を世界に広げていく結果になってしまうのではないか。
ところで、トランプ大統領は、いいだしっぺでありながら、アメリカには受け入れないと初めから言っているのは、これいかにである。
しかし、どういうわけか、日本が今その最先端にいる。世界に先駆けて、まもなく、イスラエルの次にトランプ大統領に会う石破首相。トランプ大統領に押されて、ガザのパレスチナ人を受け入れる気なのか。完全な主の支配の中で、石破首相がこの会談に臨むように祈る。