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2月4日(火)、ネタニヤフ首相と共に共同記者会見に立ったトランプ大統領が、ガザ避難民は、他地域へ再定住させ、その後、アメリカが地域を復興させるという、まさに誰一人思いもしなかったような超大胆な案を表明し、世界にショックを巻き起こした。世界からは大反発が相次いだ。
一方、イスラエルでは、非現実的とはいいながらも、高く評価する声が相次いだ。カッツ国防相は、すでに、ガザから出ることを希望する人が出られるよう、準備をイスラエル軍に指示したと報じられている。
国際社会に波紋と相次ぐ反発
1)ガザ避難民とパレスチナ人たちの反発
当事者であるガザ市民は今、瓦礫の下にテントをはって、サバイバルしようとしている。
しかし、メディアは、この人々が、それでも、ガザから離れないと言う声を報じている。以下は、最近、瓦礫のガザ北部へ戻った避難民の様子。息子を失った母親はガザからは出ないと言っている。
また、戦争の15ヶ月の間に、妊娠中だった娘と離れてしまったという母親は、停戦後、その娘や生き残った家族と再会を果たしているが、イスラエルへの深い怒りを表明している。
国連のパレスチナ代表リヤド・マンスール氏は、アメリカが、よりよい地域にガザ避難民を再定住させたいなら、イスラエル国内の彼らの前の家に戻らせるべきだと語っている。
2)エジプト、ヨルダン、サウジアラビアなどアラブ諸国からの反発
トランプ大統領に、ガザ市民を受け入れると期待されているエジプトとヨルダンはじめ、サウジアラビアも、ガザ避難民を移住させることは、パレスチナ人の主権を侵害することだとして、ただちに反対を表明した。
そこから、パレスチナ国家設立の論議にまで発展している。またガザにおけるアメリカ軍の存在は、地域での問題を悪化させると言っている。
3)国際社会からの反発
国際社会で最も問題視されたのが、トランプ大統領が、アメリカが、永久にガザを「所有する」という言葉を使った点と、その実現のためにアメリカ軍の派遣も排除しなかった点である。
国連グテーレス事務総長は、ガザ市民を連れ出すことはジェノサイドにも匹敵すると述べ、アメリカがガザを「所有する」ことは、国際法に違反すると述べた。
ドイツ、フランス、イギリス、オーストラリアなども反対を表明している。
ロシアは、これはイスラエルの西岸地区、ガザ地区を完全に支配しようとするイスラエルの計画だと述べ、あくまでの二国家解決を支持すると発表。中国も同様の声明を出した。
要するに、これに賛同する国はないということである。
ホワイトハウスの弁明:トランプ大統領は枠にとらわれない人物
国際社会からの大ブーイングを受けて、ホワイトハウスの報道官は、ガザが本当に、人間が生活できないほどに破壊されていることを改めて強調。トランプ大統領は、ただガザのパレスチナ人を助けたいと考えていると述べた。
また、ガザ所有するという言葉は使っているが、その費用を全部アメリカが払うとは言っていない。そこに、アメリカ軍の配備もコミットしたわけではない。トランプ大統領が言っているのは、国際社会の協力で成し遂げるとうことだと述べた。
報道官は、トランプ大統領という人は、Out of Box(既存にとらわれない人)だと言っていた。
記者団や世界の首脳は、政治的観点から、トランプ大統領の発言にいちいち引っかかっている。しかし、トランプ大統領は、そういう視点では語っていないので、理解に行き違いがあるかもしれない。
イスラエルは評価:カッツ国防相がIDFにガザを出る人のための準備指示
一方、イスラエルでは、不可能、ありえないと言いながらも、この案を評価する声が多い。ガザから避難民が全員出るということは、ハマスも出るということになり、これまでの状況を一転できる可能性を含んでいるからである。
特に右派の間で、評価が高い。イスラエルTVのベテランニュース・キャスターも、「こんな方法は考えたことがなかった。最高だ。」と言っていた。
政治家のネタニヤフ首相は、トランプ大統領との共同記者会見でこれを聞いた時には、さすがにちょっと引いた感じもあった。
しかし会見の翌日、これは良い考えだと表明。もしガザから出ることを希望する人がいるなら、出ていけるのはいいことではないか。少なくとも検討する価値があるとの考えを表明した。
またカッツ国防相は、この案を評価し、ガザを出ることを希望する人のために、その準備をするようにと、イスラエル軍に指示した。
どこへ行くかについては、スペインなどが想定されているが、カッツ国防相は、「世界でガザのパレスチナ人たちを支持していた国は、彼らを受け入れるべきだ。受け入れない問いということは、その国が偽善者だったことになる」と語っている。
なお、スペインはすでに拒否を表明した。
石のひとりごと
トランプ大統領は、政治家ではなく、ビジネスマンであり、実質を見る人だと思う。今、ガザ地区は、全地域の3分の2が破壊され尽くしており、不発弾も多数ある。確かに人間が住める状態にない。
このまま放置すれば、結局ハマスが支配する中、暴力と死がはびこる地域に戻るどころか、前よりもひどい地獄になってしまうことは明らかである。
一方で、ガザ地区は地中海に面するビーチがあり、ホテルが立ち並べば、すばらしいリゾート地になりうる。
ガザが破壊され尽くした今、これをクリーンにして、ハマスも追い出して、復興すれば、雇用を生み出すとともに、世界の人々もこの地を楽しめるようになる。
中東の平和というビジョンにもつながっていく可能性も見えてくる。いわば、今、地獄かパラダイスかの前にいるということである。
また、トランプ大統領は、これをアメリカが独占してやろうとはしていない。そんな大金をアメリカだけが負担してまで、ガザを独占しようとは考えていない。
世界が協力して投資しながら、それぞれが益を得るようにすすめる。これをリードするのが、アメリカだといっているのである。
そのプロセスの中で、また、ガザが豊かになった時に、帰りたいと思うガザの人がいれば帰ってくることも否定していないのではないかと思う。
実際のところ、本当にガザのパレスチナ人のことを思うなら、この方法は検討の余地があるかもしれない。いわば、「実質」ありきのアイディアだからである。
しかし、こんなアイディアは、スタートアップに長けた、イスラエル人にすらなかったものである。ホワイトハウス報道官は、トランプ大統領は「Out of box(既存ではない人)」であり、それだから、私たちは彼を選んだと言っていた。
しかし、今、このOut of Boxの考え方を理解し、不可能にみえるがやってみてもいいかもと考えるのは、アメリカ(共和党)とイスラエルだけである。
ユダヤ人と、その国イスラエルは、これまでの長いサバイバルの期間、どんな不条理においても、とにかく、実質を最優先しなければ、生き延びることができなかった。また聖書には次のように書いてある。
私は一心に知恵を知り、昼も夜も眠らずに、地上で行われる人の仕事を見ようとしたとき、すべては神のみわざであることがわかった。
人は日の下で行われるみわざを見きわめることはできない。人は労苦して捜し求めても、見いだすことはない。知恵ある者が知っていると思っても、見きわめることはできない。(伝道の書8:17)
朝のうちにあなたの種を蒔け。夕方も手を放してはいけない。あなたは、あれか、これか、どこで成功するのか知らないからだ。二つとも同じようにうまくいくかもわからない。(伝道の書11:6)
しかし、世界や特に中東のイスラム世界がこの考えになるとは、考えにくい。では、世界は、ガザをどうするのか、この他にどんな案があるというのだろうか。
あるとすれば、イスラエルが消えて、西岸地区とガザをつなぐ、パレスチナ人の国ができるという代替案しかないのではないか。
現実問題として、トランプ案を実現することは難しいと見る方が確率は高い。また、今後のガザでの人質解放に悪影響になるとの懸念も出ている。アメリカとイスラエルは、世界からどんどん孤立していくかもしれない。
一方で、以外にもガザの人たちの間から出てい来たいと言う人が大勢出てくるかもしれない。しかし、その場合は、反イスラエル主義とテロを世界にばら撒く可能性も懸念される。
では、いったい何が言いたいのか、どう祈るべきなのか。主に聞きながら・・としか言いようがない。