ガザ市民の本音は移住希望?:ハマスは強気か危機感か 2025.2.8

Displaced Palestinians walk on a road to return to their homes in the northern Gaza Strip, January 28, 2025. (AP Photo/Abdel Kareem Hana)

ハマスは強気か危機感か

ハマスは、人質解放の際などで、まだまだ健在ぶりを見せている。トランプ大統領が、ガザ市民全員移住という衝撃的な案を発表すると、ハマスはこれを一蹴する声明を出した。

またその後の2月7日(金)に、ガザで数百人が集まって、銃を放ちながら、ハマス3番手の指導者で、昨年3月にイスラエルのドローン攻撃で殺害され、今年1月30日に死亡が確認された、マルワン・イッサの葬儀を行った。

今、このタイミングで行うところに、ハマスが憎しみをアピールしている感じもある。

www.timesofisrael.com/slain-hamas-deputy-chief-marwan-issa-given-gaza-burial/

トランプ大統領は、その後、「ガザ市民再定案は、別に急いでいるわけではない」と、具体的な動きをはぐらかすようなことを口走っている。

また、ネタニヤフ首相の直後に会談した石破首相との会談では、日本にガザから負傷者や病人を受け入れるよう圧力がかけられるのではとも懸念されていたが、共同声明におおいて、その点は、出なかった。

しかし、ハマスは、実は、以前から、ガザ市民が、大勢ガザから出ていく可能性に危機感を持っていたのであり、トランプ大統領の発言で、これが加速することに危機感を持っているとの見方がある。

エルサレムポストによると、MAITIC(何の組織かは不明)が出した、ハマスのカン・ユニス武装旅団による、「若い世代は幻想を追う」という文書の中に、2007年にハマスがガザを支配するようになって以降、25万人の若者が、ガザを離れたと書かれていているという。また若い世代の44%が、経済的な理由で、ガザを離れることを検討しているとも警告している。

この文書は、若者がガザから出て行くと、楽な暮らしに慣れて、イスラムやイスラエルへの敵意から離れるかもしれないと警告しているという。

データは非公式で信憑性は不明ではあるが、もしこれが本当であれば、今後、トランプ大統領がこの案を始動させる以前に、停戦とともに、ラファの検問所はじめ、検問所が開いていくにつれ、自然と大勢がガザから出て行く可能性もある。このシナリオを、ハマスは懸念しているのではないかということである。

www.jpost.com/middle-east/article-841120

*ガザへの人道支援物資状況

日本では今、今年一番の寒波を記録しているが、ガザを含むイスラエルの地域でも今は冬であり、寒い上に雨も降りやすい季節である。

ハマスは、停戦になってからの支援物資の搬入を、イスラエルがまだ阻止していると非難している。しかし、COGAT(イスラエル軍占領地政府調整官組織)によると、この3週間の間、支援物資のトラックは1日550台の1万2600台(国連は1万台以上と認めている)と、停戦前の10倍とも言われている。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/hamas-again-accuses-israel-of-withholding-humanitarian-aid-cogat-12600-trucks-entered-gaza-since-start-of-truce/

石のひとりごと

ガザで生まれ育ったパレスチナ人たちは、いったいこの状況をどう見ているのだろうか。停戦後、ガザ北部へ帰って行く大群衆の人々の顔には笑顔も見える。故郷に帰ることへの喜びもあっただろう。

しかし、故郷はもう破壊され尽くしていて、自分たちをどこかへ移住させると、外国人が決めるかのような流れであり、しかも彼らを受け入れようとする国は、一つもないのである。ガザの人々の心が怒りや憎しみで支配されず、とにかく前を向いて、自分の人生を切り開く思いになるようにと祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。