ガザ再び戦争になる可能性高まる:人質家族は停戦と交渉継続訴え 2025.3.5

Gazans, including young children, and Hamas gunmen gather shortly before the release of three Israeli hostages in Nuseirat in the central Gaza Strip on February 22, 2025. (Eyad BABA / AFP)

イスラエルとハマスの交渉が座礁中

イスラエルとハマスの停戦の合意は、3月1日(土)に、第一段階が終わった後、第二段階に進むことができず、頓挫した状態にある。

イスラエルはアメリカの案に合意するとして、ハマスに第一段階を42日延長することを要求している。

この案によると、この期間の始まりとなる今、残されている人質59人(生死に関わらず)の半数を解放することになる。

しかし、ハマスは、あくまでも、イスラエルの完全撤退を含む、先に合意した計画に基づく第二段階への移行を主張。アメリカの案は拒否している。

このため、イスラエルは、3月2日から、ガザへの人支援物資の搬入を停止し、合意にむけて圧力をかけている。

国際社会はいっせいに、イスラエルを非難しているが、イスラエルは、ガザにはもう十分な物資があると反論している。

このままであれば、ガザでの戦闘が再開になるしかない。トランプ大統領は、「ガザに地獄の戸が開く」と言っている。

政府に早急な交渉再開を求める人質家族

この状態で慌てているのは、今まだガザにいる人質の家族たちである。その一人であるイスラエル兵のマタン・アングレストさん(21)の母親アナットさんは、これまで公開していなかった息子の写真を公開し、交渉継続を訴えた。

アナットさんは、「新たに兵士を送り込んでまた帰らぬ人を作る前に、今人質として命の危険にさらされている息子とすべての人質を帰国させる必要がある」と訴えている。

また、マタンさんは、10月7日の戦闘中に負傷していると見られるにも関わらず、人道的な観点からの早い時期の解放の中に含まれていなかったとして、人道的な問題も訴えている。

現在、ガザにいる人質は59人で、このうち24人が生きているとみられている。

www.timesofisrael.com/hostage-father-says-hell-publish-more-images-of-sons-captivity-to-push-for-release/

民意は割れる?国民の半数近くが停戦交渉支持

ガザでの戦争が再開になりそうな流れだが、3月3日に報じられた、イスラエルのテレビKANの調査(18歳以上601人)によると、停戦交渉、ガザへの支援物資、ネタニヤフ首相の指導力について、民意がわれていることがわかった。

それによると、回答者の半数近くの44%が、戦争に戻るのではなく、ハマスと第二段階への交渉を続けるべきだと答えていた。

交渉を続けることを支持した人は、34%が、アメリカのウイトコフ中東特使が進めている、第一段階の42日延長と、その間に人質を解放する案を支持すると答えていた。

一方、戦闘に戻るべきだと答えた人は、9%であった。

ネタニヤフ首相については、自身が汚職裁判中でもあり、41%が不適格と答えていた。

28%は、ハマスとの戦争が終までは、首相でいるべきと答えていた。18%は、首相職に専念できるよう、裁判は停止するべきだと答えていた。

では代わりになりうる指導者はいるのかだが、ナフタリ・ベネット前首相が、新たな右派政党を結成するか、左派政党が一致すれば、ネタニヤフ政権が国会過半数を割り込む可能性もあるとのこと。しかし、今のところ、それが現実になる気配はない。

www.jpost.com/israel-news/article-844732

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。