ガザについてイスラエルはどうしたらいいのか:アモス・ヤディン少将(退役) 2025.5.8

Palestinians sift through debris following an Israeli strike in the Bureij refugee camp in the center of the Gaza Strip, May 7, 2025. (Eyad BABA / AFP

ガザ情勢の今

Ma’ayan Toaf (GPO)

イスラエルは、ガザでの本格的な攻撃を開始し、制覇した地域に留まって、人質を解放するとともに、ハマスを殲滅する作戦を準備していると表明した。

しかし、同時に、攻撃は、来週予定されている、トランプ大統領の中東訪問が終わってからになると発表し、それまでの間、まだ交渉の余地はあると表明している。

しかし今、ガザでは、人道支援状況がいよいよ危機的になっているとの情報が、国際社会に出回っており、ハマスは、世界の同情により頼み、今は人質の交渉をする時ではないと豪語している。

こうした中、イスラエル国内では、人質解放と、ハマス殲滅という、関連はあるものの、優先度はどちらになるかで分裂の様相にある。

政府は、ハマス殲滅を匂わせているが、イスラエル軍は、戦争の目的は人質の奪回であると、人質解放優先を表明している。

イスラエル軍事専門家の意見:イスラエルはハマスと交渉して停戦してでも人質解放優先すべき

ではイスラエルはいったいどうすればいいのか。イスラエル元軍事情報長官、元イスラエル空軍副司令官、アモス・ヤドリン少将(退役)が、自身の考えを語った。

アモス少将は、ハマスを完全に取り除くことは不可能だと考えている。たとえ物理的に取り除いても、そのアイディアはなくならないからである。ISISやアルカイダからもそれが明らかである。

また、アモス少将は、実際のところ、今イスラエルが、周囲の敵をかなり排斥できていることを挙げた。

シンワルを排除し、ガザは瓦礫状態にある。パレスチナ政策・調査センターの統計によると、ガザの人々のうち、48%は、反ハマスデモを支持すると答えており、できれば他国に移動を希望すると答えた人は49%とほぼ半分にのぼっていることがわかった。

www.jpost.com/israel-news/article-852904

ヒズボラは、レバノンの責任において、イスラエルとの国境には存在できなくなっている。シリアもアサド政権がいなくなり、今のシャラア暫定政権は、イランに敵対しており、イスラエルとの対話も望んでいるようである。

イエメンのフーシ派も、アメリカの攻撃に加え、昨日のイスラエルによる攻撃で、そう簡単には、反撃もできないだろう。イスラエルは今、ハマスから見れば、かなり優位に立っているともいえる。

アモス少将は、従って、今は、ハマスと交渉し、停戦に応じて、まずは、人質を全員とりもどすべきだと思うと語った。その後の交渉で、ハマスに完全な武装解除をせまったらよい。また、ヒズボラのように、国境周辺には存在しないような約束にすれば、2度と10月7日のようなことはできなくなる。

もし、こうした要求に、ハマスが応じなかったら、その時は遠慮なく、ハマスを攻撃できる。もう人質はいないからである。

アモス少将はまた、政府が、イスラエル軍が、ガザで人質を取り戻し、ハマスを殲滅するまで、ガザに残留すると言っていることについて、警鐘を鳴らした。

イスラエルは、ガザに残留しても、アラブ諸国を交えた話し合いで合意に至れば、できるだけ早く撤退するべきだと語る。復興にイスラエルが関わるべきでなく、それは、アラブ諸国がするべきである。そうでないと、ガザの人々とイスラエル軍の間で紛争となり、西岸地区のようになってしまうからである。

しかし、今のネタニヤフ政権の動きを見ると、ガザに、かつてのように、ユダヤ人入植者を戻したい考えを持つ右派政治家がいる。

同様に、西岸地区では、強硬右派の放火などにより、多くのパレスチナ人が移動を余儀なくされる動きもある。西岸地区も徐々にイスラエル側に取り込もうとする気配もある。

アモス少将は、ネタニヤフ首相は、戦争を終わらせるというよりは、政治的に優位に立つように、戦争をできるだけ長引かせようとしていると語っていた。

…とこの記事を書いている中、アラブ諸国が、ハマスにイスラエルとの交渉に応じるようにと圧力をかけているというニュースが入っている。

実際イスラエルは、どう動くべきなのか。万軍の主、イスラエルの神である主の前に指導者たちがへりくだって、最善の道へと進んでくれるように祈る。

わたしが、あなたの神、主である。わたしはあなたをエジプトの地から連れ上った。あなたの口を大きくあけよ。わたしが、それを満たそう。

しかしわが民は、わたしの声を聞かず、イスラエルは、わたしに従わなかった。それでわたしは、彼らをかたくなな心のままに任せ、自分たちのおもんばかりのままに歩かせた。

ああ、ただ、わが民がわたしに聞き従い、イスラエルが、わたしの道を歩いたのだったら。わたしはただちに、彼らの敵を征服し、彼らの仇に、わたしの手を向けたのに。 詩篇81:10-14

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。