ガザとの戦争・ツック・イタン作戦から1年 2015.6.16

<イスラエル独自の調査結果発表>

イスラエルとガザとの昨年の戦争から1年を迎える。国連の人権保護団体は、来週の第70回国連総会でイスラエルが戦犯にあたるかどうかの調査結果の発表を行う予定となっている。決議は6月29日。しかし、調査結果自体は今週にも発表されるみこみである。

国連決議そのものに実効性はないのだが、今回は、パレスチナ自治政府が国際法廷のメンバーになっている。国連総会でもし戦犯と決議された場合、国際法廷に持ち込まれる可能性が出て来る。

イスラエル外務省は、これに先駆けて先週、277ページに及ぶ独自の調査結果を発表し、作戦に違法性はなかったと主張した。

違法ではないというのは、イスラエルに非武装の市民を攻撃しようとする意志がなかったことをあげている。戦犯かどうかは、非武装市民をあえて狙って攻撃したかどうかが問われるはずだというのである。

イスラエルは、攻撃の前には、最大限の努力をして市民へ避難を呼びかけ、巻き添えを防ごうとしたと強調している。

その結果、市民の犠牲者約2189人のうち、非武装市民は44%で、その比率は1:1だった(通常の先進国の戦争では1:3など)。もしハマスが学校や人口密集地から攻撃していなかったら、もっと犠牲は防げたはずだと主張している。

The Jerusalem center Video www.youtube.com/watch?v=yFaaAA13sgc

また、イスラエルのメディアは、ハマスが15才以下の子供たちを戦闘員に育成し、次のイスラエルとの戦闘の準備をしていると訴え、ハマスこそ戦犯だと主張している。(アルーツ7がどりあげたジャーナリストDavid Bedein氏作製ビデオ 2015.3.22公開)

www.youtube.com/watch?v=iO4UKXmr8zk *ハマスの訓練を受けている子供たちのコメントが衝撃的・とりなし手必見

この後、イスラエルが先週、国連人権保護団体(UNHRC)調査団長マカリム・ウィビソノ氏(インドネシア)の入国を拒否していたことが明らかとなった。

イスラエルは、「これまでいかなる調査団でも受け入れて来た。しかし、明らかにパレスチナ支持でバランスに欠ける調査団の場合、話は別だ。」と調査団を拒否した事実を認めた。ネタニヤフ首相は、UNHRCは、調査結果が出る前からすでにイスラエルを非難していると訴えている。

前UNHRC議長のウイリアム・スカバス氏(今年2月に辞任)は、「イスラエルは、ハマスだけが悪いと言っているが、戦争では、どちらか一方だけが悪いということはありえない。イスラエルもハマスも両方とも戦犯だ。」とコメントしている。

<世界情勢と人権保護>

それにしても、毎度のことながら、国連は、昨年、50日間で終了し、しかもイスラエルとガザというきわめて限局した地域の戦争にこだわっている時間はないのではないかとも思わされる。

シリアでは、同じパレスチナ人のヤルムク難民キャンプがイスラム国に包囲され、ガザどころではないほどの地獄の沙汰となった。また、今週、イスラム国がシリアのほぼ半分を制圧したことを受けて、トルコへ新たに数千人の難民がおしよせている。

ヨーロッパをめざして地中海を渡ってくる難民も数千人単位となっており、その多くが途中で死亡している。ヨーロッパはその対処の方策さえわからなくなっている。

アジアでも、ミャンマーのロヒンジャ族の難民船が、まだ海上でさまよっている。行き場のないロヒンジャ族を、ISISやイスラム過激派らが、勧誘し、訓練して戦闘員にしているという。http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150612-00151006-newsweek-int

BBCによると、イギリス人の17才の少年が、イギリス人としては最年少でイスラム国入りし、自爆テロで死亡したことが明らかになった。

戦争の重さを比べる事はできないのだが、これらの状況を考えれば、今この時にイスラエルだけをとりたてて戦犯として摘発しようとするのは、それこそ、アンバランスではないのだろうか。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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