エルサレム統一記念日フラッグ・マーチ:一部の強硬右派「アラブに死を!」警察と衝突 2025.5.28

Participants in the Jerusalem Day Flag Parade gather outside the Old City's Damascus Gate, May 18, 2023 (photo credit: MARC ISRAEL SELLEM/THE JERUSALEM POST)

エルサレム統一記念日:フラッグマーチ

ガザでGHFが食料配布を始めた5月26日(月)は、第58回エルサレム統一記念日だった。

この日は、右派シオニストの若者たちが、旧市街のイスラム地区を、イスラエルの旗を掲げて更新することが恒例行事となっている。

ガザでの戦争が始まってから今年で2回目になるが、昨年は警察との衝突で18人が逮捕されており、今年も緊張が高まっていた。全体的に見て、政府が右派の動きに寛容になっていると指摘されている。

パレードは、西エルサレムのグレートシナゴーグ前に設置されるステージでのイベントから始まる。イベントでは、極右政治家ベングヴィル氏が登場し、ガザでの人道支援物資配布を開始したネタニヤフ首相に反対したことを表明。「みなさん、私はアラブ人を憎んでいない。しかし、テロリストを憎んでいる。彼らは死刑になるべきだと思う」と叫んでいた。

午後2時から始まるフラッグ・マーチの前には、強硬右派シオニストの若者たちが、イスラム地区に続くダマスカス門前で、「ナクバなしに勝利はない」と掲げたプラカートを掲げた写真をSNSに投稿していた。

ナクバとは、パレスチナ人が、イスラエル建国によってパレスチナ人たちの土地が奪われたことを嘆くアラビア語である。それを強硬右派シオニストたちが掲げることで、パレスチナ人を全員追放することこそが勝利だと主張しているということである。

午後2時に、フラッグ・マーチが始まると、数万人の強硬右派シオニストの若者たちが、イスラエルの旗を掲げて、旧市街ダマスカス門から入り、ムスリム地区から嘆きの壁までをマーチした。

ほとんどは、エルサレムが統一されたことの喜びを表明しての行進だった。しかし、一部の過激な者たちは、途中、「アラブに死を!」「お前たちの村は燃えてしまえ」などと叫んで、パレスチナ人と衝突。警察とも衝突になっていた。しかし、逮捕者は報告されていない。

www.youtube.com/watch?v=j0tmKaLt-38

極右政治家:ベン・グヴィル氏神殿の丘へ

この緊張の中、極右政治家として知られるベン・グヴィル氏は、神殿の丘を訪問。そこで、ユダヤ人が、ひれ伏して祈ることを許可すると宣言していた。これは、神殿の丘の「現状維持」のルールに反することである。

1967年、イスラエル軍は、神殿の丘を含む東エルサレムを奪還し、エルサレム統一を果たした。

当時のイスラエル政府は、神殿の丘が1000年以上、イスラムの聖地でもあったことに配慮し、管理はヨルダンのイスラム教ワクフが担当し、治安の維持はイスラエルが担当するという、「現状維持」の現状を決めたのであった。

このルールの中、ヨルダンのワクフは、ユダヤ人が神殿の丘で祈ることを禁止とし、ユダヤ教聖典はじめ、キリスト教徒にも祈りや聖書の持ち込みは、今も禁止されている。

しかし、強硬右派たちは、徐々に強硬に、この場所で祈るようになっている。3000年前には、この場所は、イスラエルの神殿があったと主張しているのである。

以下は、禁止となっているイスラエルの旗を、神殿の丘に持ちこんでいる様子。

www.timesofisrael.com/ben-gvir-says-jewish-prayer-including-full-prostration-permitted-at-temple-mount/

石のひとりごと:第三神殿への足音?

イスラエルの強硬右派たちは、神殿の丘に、第三神殿を建てる野望を隠していない。具体的な準備も進められている。

そうした中で、今の政権には、シオニスト政党や強硬右派政党が含まれている。これをチャンスとばかりに、今、過去になかったほどに、右派たちが大胆になっている。

まだまだとは思うが、第三神殿の登場への足音は、もうはじまっているのかもしれない。。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。