ウィトコフ米特使が進めるロシアとの交渉・イランとの交渉:世界大戦への足音 2025.4.25

Ukrainian search personnel clear the rubble after a Russian ballistic missile attack in Kyiv, Ukraine, early Thursday, April 24, 2025. (AP Photo/Efrem Lukatsky)

世界を振り回しているトランプ政権。ロシア・ウクライナ問題、イスラエル・イラン問題でも中に入って、停戦をもたらそうとしているが、それぞれの関係諸国には、受け入れ難い形で、話が進んでいる気配がしている。

いずれの場合も、世界大戦に拡大する可能性のある繊細な問題である。

アメリカのウィトコフ特使が、どちらのケースにも交渉役として行き来しており、今日はモスクワでプーチン大統領と会談。明日は、オマーンでイランとの(間接)交渉を行うことになっている。

ウクライナ:交渉前にロシアがキエフ攻撃・12人死亡

Donald Trump in the Oval Office of the White House on April 23, 2025, in Washington. (AP Photo/Alex Brandon)

トランプ大統領は、ロシアがウクライナへの攻撃を停止するよう交渉を続けている。

最終の条件については、①クリミア半島のロシア領化とアメリカが承認、②ロシア軍が略奪したウクライナ東部をロシア領とする、③ウクライナは、NATOに加盟しない。となっている。

これでは完全にロシアに敗北の形だが、今以上、ウクライナへの進軍はないとはなっている。

大きな譲歩をしても、国全体を乗っ取られないことで、譲歩するしかないと言われているようなものである。

www.cnn.co.jp/usa/35232274.html

アメリカのウィトコフ特使は、今日、モスクワでプーチン大統領と面会することになっている。

www.reuters.com/world/europe/trump-envoy-heads-moscow-more-ukraine-peace-talks-with-putin-2025-04-22/

Wiki

ところが、ウィトコフ特使がプーチン大統領と会談する前日の4月24日(木)、ロシアはウクライナの首都キーウはじめ、ウクラナ各地へ、弾道ミサイルなど70発、ドローン145機による激しい攻撃を実施した。

この攻撃で、キーウでは、集合住宅が大破し、少なくとも12人が死亡。まだがれきのしたから被害者の救出が急がれている。負傷者は、キーウとウクライナ各地で80人にのぼっている。

ウクライナからは、ロシアには和平を結ぶ気などないとの声が上がっている。ゼレンスキー大統領は、訪問先の南アフリカから急ぎ、ウクライナへ帰国するとのこと。

さすがのトランプ大統領も、これにはロシアに対する不満を表明。「週に5000人の兵士が死んでいる。今和平を結んで戦争を終わらせるべきだ」と述べた。

www3.nhk.or.jp/news/html/20250424/k10014788271000.html

結局のところ、ロシアは、ウクライナ全土を手に入れたいのであり、今の停戦案がいかにロシアに有利であっても、その最終目標を阻止されるような合意には賛同しない可能性もある。

アメリカは、もし、今回も仲介に失敗した場合は、仲介から手を引くとも言っており、そうなるといよいよロシアは、ウクライナを制覇し、ヨーロッパへの脅威になっていくかもしれない。

イラン:イスラエルの意に反する合意の可能性

 April 7, 2025
(photo credit: LEAHMILLIS/REUTERS)

イスラエルはもともと、アメリカの協力の元、イランの核兵器開発施設を攻撃、破壊する予定だった。

ところが、トランプ大統領が、この4月7日、ネタニヤフ首相をワシントンに呼びつけて、イランへの攻撃ではなく、交渉を開始すると伝えた。

これはネタニヤフ首相には晴天の霹靂だったとも言われている。

その後、アメリカは、ウィトコフ特使を派遣して、イランが核保有国にならないようにとの交渉を開始し、すでに2回行われた。

ウィトコフ特使は、「非常に進展している」と言っている。ウィトコフ特使は、あさって26日(土)にオマーンで、3回目となるイランとの交渉に臨むことになっている。

これに対し、イスラエルは、イスラエルがアメリカに要求した条件、イランが間違いなく将来的にも核兵器を保有できなくなるための条件を、満たさないままで合意に至るのではないかとの懸念を表明している。

もしアメリカが、少しでもイランに譲歩して、停戦の合意に至った場合、イスラエルが、単独でもイランの核兵器関連施設を攻撃に出る可能性が出てくる。そうなるとイランが反撃しないはずはなく、中東に戦火が広がる可能性が出てくる。

いずれの場合も非常に危険な状況である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。