27日、ベエルシェバ近郊のハツリム空軍基地では、第166期生(パイロット養成訓練)の卒業式が行われた。卒業式といっても空軍なので、屋外の広い空港が会場である。今年は特にヨム・キプール戦争40周年記念もかねての式典だった。
最優秀生の表彰、バッジの授与、恒例のベレー帽を空中に投げ挙げる儀式に続いて、F15戦闘機、アパッチヘリコプター、空中給油などの航空ショーが行われた。
<”翼をもらう日”:空軍パイロットへの道>
イスラエルでは18才で全国民が徴兵されることになっているが、空軍パイロットの場合は、中学生ぐらいから適正が判断される。
その後選別されぬいた若者が、最低でも4年の厳しい訓練を耐え抜いてやっとパイロットになれる。数百人が訓練を開始するが、最後まで残るのは20-30人である。イスラエルでは男子だけでなく女子のパイロットもいる。
卒業式は年2回。卒業生に敬意を表して、国の重要人物が列席することになっている。今回も、ペレス大統領、ネタニヤフ首相、ヤアロン国防相、ガンツ参謀総長が列席。祝辞、訓辞、兵士を送り出す家族への感謝を述べた。
この日は「翼をもらう日」と呼ばれ、家族親族一同が招かれての式典となる。30人ほどの卒業生だが、球場ぐらいの人数は集まっている。卒業生の名前が呼ばれるたびに、家族だけのTシャツを着た親族一同が立ち上がり、喜びの叫びをあげていた。
エルサレムでは、陸軍のエリート、パラシュート部隊の卒業式も行われた。こちらも訓練に耐え抜くことは容易ではなく、空軍と同様、感動の卒業式となる。
<ガンツ参謀総長:不穏な北部情勢に備える>
喜びにわいた卒業式だが、新しく卒業した兵士たちやその家族が直面する治安情勢は、かなり厳しい。訓辞を述べたガンツ参謀総長は、「南北で情勢がゆるがされている。特に北部ではシリア内戦は悪化しており、ヒズボラのナスララ党首のローブに火がつき始めている。」と述べた。
イスラエル軍は28日、万が一に備え、北部ハイファ近郊にアイアンドーム(迎撃ミサイルシステム)を配置した。また、昨日まで、ゴラニ歩兵部隊が、ガリラヤ湖近郊の密林の中で軍事訓練を行った。
この訓練は、道なき険しい道を暗闇の夜中中、40キロの荷物を担いで歩くという訓練である。全行程15キロだが、2キロ行くのに2時間もかかるような山中だという。
イスラエルの治安は今のところ、守られている。しかし、その背後には、若い兵士たちと息子や夫を戦場へ送り出す家族たちがいることを忘れてはならない。