イスラエル国土防衛の現状 2012.8.13

<携帯を通じた警報システム>

イランからのミサイル、核弾頭、シリアからの化学兵器など、いつ何時イスラエル国土を巻き込む戦闘も否定できない現状を受けて、イスラエル国防軍は、全市民に携帯を通じて危険を知らせるシステムを構築中で、今週いっぱいテストが行われる。

ガザ周辺地域ではすでにこのシステムが使われており、国防軍から、シェルターに入れという緊急指令の他、いつまでシェルターで過ごすのか、シェルターから出てもよいのかなどの通知が市民に配信されている。

こうした通知はショックが大きく、パニックになってもいけないので、17才以下の子どもには配信されない。大人が受信し、それぞれの親が子どもを守るシステムだ。

<なおざりのシェルター(防空壕)>

かつては、すべての家屋の近くにシェルター(防空壕)を作ることが義務だった。しかし、平和が続くと、その規制がゆるみ、シェルターのない家が増えている。

全国的に見ると、約170万人、人口の40%がミサイル攻撃や空襲があっても入れるシェルターを持っていない。また、町の経済力によってシェルターの配備に差が出ていることがわかった。貧しい町ほどシェルターが完備されていない。

またシェルターがあっても物置になっており、実際には使えないシェルターも多い。(Yネットニュースによると、現存するシェルターの60%がこの状態)

<テルアビブ>

ユダヤ人が世界一集中して住んでいるテルアビブだが、ハアレツ紙によると、人口約40万人のうち、シェルターに入れるのはその1割の4万人しかないことがわかった。テルアビブ市が、規制をなおざりにしてきたため。

またテルアビブ市内には公共のシェルターが約400カ所あるが、係官が回って鍵を開けるだけで24-48時間かかるという調査結果が出た。これではいかなる攻撃にも間に合わない。

<ガスマスク不足>

1991年の湾岸戦争の時は、ほぼ全市民にガスマスクが配布され、イスラエル軍からは、いざ化学兵器が撃ち込まれた場合にどう動けばよいのか、徹底したマニュアル指導が行われた。そのため、実際にスカットミサイルが着弾した時も市民はあわてずに密閉した部屋に入り、パニックにはならなかった。

ところが現在、シリアやイランからの同様の攻撃の可能性がある中で、ガスマスクを持っている市民は60%。これから全市民に配布するだけの、ガスマスクを製造、配布するのに2-3年はかかると計算されている。*ガスマスクは海外から注文できず、国内で生産するしかないため。

今、もし本当に戦争になったら、イスラエル市民の多くが逃げる場所もガスマスクもないというのが現状である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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