イスラエルとトルコが和解へ 2013.3.23

オバマ大統領が3日目の行程を終えて、ヨルダンへ旅立つ直前、ホワイトハウスが、ネタニヤフ首相がトルコのエルドアン首相に電話し、2010年のマビ・マルマラ事件(トルコ人9人死亡)についてイスラエル軍にいくつかのミスがあったとして謝罪。両首脳が和解にむけて動き出したと発表した。

ネタニヤフ首相は、謝罪と共に、犠牲者9人の家族に補償金を支払うことも申し出た。トルコはこれを受け入れ、両首脳は、この事件以前までのイスラエルとトルコの友好関係を回復させることで合意したという。

<イスラエルとトルコの関係が改善するとどうなるか>

ホワイトハウスから速報で流されたこのニュースはたちまち世界のトップニュースとなった。トルコとイスラエルの関係改善は、周辺諸国に広がりつつあるシリア問題を解決する大きな布石になりうる。

また非イスラム主義国家であり民主国家である両国が友好関係を回復することで、中東で広がりつつあるイスラム主義勢力に釘をさすことにもなりうる。

ネタニヤフ首相はエルドアン首相への電話で、「オバマ大統領から、地域の協力関係について、その中でトルコとイスラエルの関係改善が非常に重要であると聞いた。」と伝えた。この関係改善は、オバマ大統領のイスラエル訪問における大きな成果の一つとして評価されている。

*マビ・マルマラ事件

2010年5月、イスラエルのガザ沖海上封鎖に抗議するため、トルコを出立、地中海を横断してガザへ向かった人道支援物資を乗せた船・マビ・マルマラ号を、イスラエル海軍が停止するよう要請。

要請を無視して前進してきたため、イスラエル軍兵士が船にのりこんで乱闘となり、結果的にトルコ人活動家9人が死亡した。

船に乗り込んだイスラエル兵は大人数でなぐられて負傷しているため、反撃は正当防衛だったと主張。これまで9人の死亡に遺憾の意を表しながらも、謝罪は拒否してきた。

この事件発生時、外務相だったリーバーマン氏は、今回のネタニヤフ首相の謝罪は間違いだと非難している。

<クルド人との和解も進む?トルコ>

トルコでは22日、30年来となる独立を求めるクルド人との紛争にも終止符になる可能性が出てきている。

クルド人指導者で、1999年からトルコの刑務所にいるアブドラ・オカランが、クルド人戦士たちにトルコと和解し、数千人にのぼる兵力をトルコから撤退させるよう指示したのである。

クルド人は、トルコ、イラン、イラク、シリア、レバノンなどをまたいで存在する民族。独立を求めて紛争になることが多く、特にクルド人勢力からなるPKKは、アメリカ、EUからテロ組織に指定されている。

これまでにクルド人は、何度も停戦、破棄を繰り返してきたため、トルコは、クルド人武装勢力、特にPKKがどうでるのかを見守っているもよう。

なお、上記マルマラ事件でも、実際に船に乗船していて犠牲になったのは、平和活動家ではなくPKKメンバーだったとの分析もある。イスラエル、トルコ、クルド人勢力、ここにアメリカが介入してなんらかの動きをしているのかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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