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シリアのドルーズが直面する危機:イスラエルは負傷者21人救出
先週、シリアで、暫定政権治安部隊のスンニ派過激勢力とドルーズの宗教的な対立による衝突が発生。
シリア各地のドルーズが襲撃された。状況が徐々に明らかになっている。(写真はシリア暫定政権治安部隊)
イギリス系人権団体(SHOR) によると、この衝突で、109人近くが死亡したとのこと。その中には、ドルーズ市民11人、ドルーズ戦闘員26人と男性42人が含まれているとのことで、死者のほとんどがドルーズである。
これを受けて、イスラエル国内在住14万のドルーズが、イスラエルに支援を懇願。イスラエルは、国内ドルーズの忠誠を確認後、5月1日(木)、首都ダマスカスの大統領官邸付近への空爆を実施した。シリア暫定政権にドルーズを守るよう、警告するためだったと言われている。
シリア国営放送によると、イスラエル軍はその後も、2日(金)、3日(土)にかけて、ダマスカス、ラタキア、ハマ、ダラアと全国的に、20回以上の空爆を実施した。標的は、旧アサド政権の軍事拠点、その防空システム、武器庫などである。
イスラエル軍は、ドルーズ襲撃の中でも最大だったとみられるシリア南部のアル・スゥエイダ(イスラエル国境から70キロシリア内部)に陸軍とヘリコプターを派遣。ドルーズ負傷者5人を救出した。
これで救出したドルーズは計21人。全員、イスラエル北部国境に近い病院に搬送して治療を受けている。
イスラエルのドルーズコミュニティの指導者シーカー・モアファク・タリフ師は、2日、ネタニヤフ首相を訪問して、感謝を表明していた。
シリアのドルーズ指導者シーカー・ヒクマト・ヒジリは、シリア暫定政権を非難。国際社会に対して、シリアの暫定政権とそのテロ集団から、ドルーズを守るよう訴えた。
シリアでは、アル・シャラア暫定大統領が、多様性に寛大な政府の立ち上げに努力していることから、4月25日の時点で、イギリスは、シリアの内務省、国防省を対象とした、経済制裁を緩和したところだった。その国防軍がこの混乱の原因になっているのである。
www.bbc.com/news/articles/c2ewv7y32r1o
シリア国内では、ドルーズが暫定政権の正式な国防軍に襲撃されたことから、キリスト教徒など、その他のイスラム教スンニ派以外の少数民族たちの間で、不安に陥っている。
すでに、イスラエルのNGO団体が、イスラエルとの国境に近いシリアのクリスチャン地域への食糧搬送を開始したとのこと。今後、イスラエル軍とも協力して必要物品を届ける予定とのこと。
הקרן לידידות מסייעת לתושבי הכפרים הדרוזים והנוצרים בסוריה
בסוף השבוע העבירה הקרן לידידות באמצעות צה״ל סיוע הומניטרי של 1500 חבילות מזון עבור תושבי הכפרים הדרוזים והנוצרים בסוריה. מדובר במשלוח סיוע ראשון. בהמשך צפויה להעביר הקרן ציוד רפואי על פי הצרכים שעלו מהשטח ובתיאום מלא עם… pic.twitter.com/RtGNoYdmAh
— יואב איתיאל מדווח כי (@yoavetiel) May 3, 2025
シリア暫定政権は、イスラエルの攻撃が事態をエスカレートさせると非難。ドルーズ含む少数民族を守るのは、シリア自身であると主張し、他国はシリアのことに干渉するべきでないと表明している。
今後、シリアがまた収集のつかない内乱になること、またイスラエルがそこに巻き込まれて、イスラエルが攻撃されるのではないかなど、懸念が深まっている。
www.bbc.com/news/articles/ckg58kyxxvxo
石のひとりごと:ユダヤ人助けた人のことは絶対忘れないユダヤ教
イスラエルが、国境シリア側にいるドルーズやクリスチャンを支援するのは、今回が初めてではない。内戦中も同様の活動は行われた時期があった。
ユダヤ教に基づくイスラエルは、ユダヤ人によくしてくれた人々への感謝は、徹底して忘れないようである。
かつて、ホロコーストの時代、サラエボでユダヤ人をナチスに追われていたユダヤ人を隠して、自分の身を危険にさらしてまでも保護したイスラム教徒、ムスタファとその妻ゼイネバ・ハルナガさんがいた。
戦後、1984年に、ヤド・ヴァシェムは、ハルナガさん家族(ムスタファさんは既に死亡していたため、ゼイネバさんが受賞)を、イスラム教徒としては初めて、諸国民の中の義なる人と認め、感謝を表明したのであった。
その後、1990年代に、ボスニア内乱となり、イスラム教徒が迫害される中、ゼイネバさんたちが、命の危機に置かれていることがわかった。
ヤド・ヴァシェムとイスラエル政府は、軍を派遣して、ハルダガさん一家を救出。以後、一家は、イスラエルに在住している。その後、ゼイネバさんの娘たち2人とその家族は、ユダヤ教に改宗したのであった。一人はヤド・ヴァシェムで働いている。
イスラエルにいるドルーズは、基本的にイスラエルに忠実で、若者たちは従軍もして、国のために死んだ人もいる。そういうことをイスラエルは忘れていないのだろう。
一方で、こういう国であるが故に、政府が、今まだガザにいる人質(多くはイスラエル軍兵士)救出について、ハマスの殲滅を優先し、人質解放をどこかその次にしているかの様子に、政府も国民もさぞ苦悩していることと実感する。