北の盾作戦の本質:高リスクで効果に疑問も 2018.12.13

国境のイスラエル兵 写真:Times of Israel
4日に始まったヒズボラの越境地下トンネルの摘発は、今も続けられている。イスラエル軍は10日、3本目のトンネルを発見したと発表した。

しかし、トンネルは、レバノンとの国境ブルーラインの130キロに沿って数十本はあるとみられ、これらを全部みつけて破壊するためには、相当な時間がかかると思われる。ニュースでは当初、北の盾作戦は、数週間はかかると言っていたが、今は数ヶ月はかかるという説明になっている。

ヒズボラからの公式の声明はないが、イスラエル軍の働きを嘲笑するかのように、ネット上に、作業現場の位置(国境全体に分かれて5箇所)やイスラエル兵らが休憩している様子などの写真をアップした。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Hezbollah-The-Resistance-can-infiltrate-IDF-positions-574042

北の盾作戦について、ニュースでは、イスラエル軍がうまく先手をうったというニュアンスえで報じられているが、国際対テロ研究所で、特に地下戦略に詳しいダフナ・リッチモンド・バラク博士は、北の盾作戦は、かなりのリスクを伴う割に、結局、イスラエル側での作業だけでは、完全な解決にはなりえないと指摘する。

バラク博士が警鐘を鳴らすリスクは以下の通り。https://www.m-central.org/video/#lg=1&slide=0

1)イスラエル軍兵士へのリスク


トンネルの摘発、破壊作業をしているイスラエル軍兵士は、ブルーライン(国境)の壁のすぐそばである。つまりヒズボラからは丸見え状態で、無防備といってよい。これまでに、すでに、観察していたと思われるヒズボラ戦闘員が近づいてきたため、イスラエル軍が威嚇射撃するという経過が発生している。

また、10日、ヒズボラは、イスラエル軍が作業している位置を調べて地図で公開した他、イスラエル軍兵士が休憩しているところまで顔まではっきり見える写真をネットにアップした。

イスラエル兵が遠隔から銃撃されたり、ささいなことから衝突が発生する可能性はある。

2)トンネルを全部摘発することは不可能


バラク博士によると、トンネルは掘るのは比較的簡単だが、みつけるのは非常に難しい。イスラエル軍が今、摘発しているトンネルは、諜報による情報でみつけたもので、独自に地下を調べて、みつけたのではない。ということは、イスラエル軍がまだ知らないトンネルがあっても不思議はないということである。

また、イスラエル軍がトンネルを破壊している様子をみせることで、まだ知らないトンネルがどれかをヒズボラに教えていることになり、ヒズボラの戦略を助けることにもなりかねない。

もしかしたら、50メートル以上にまで掘り進んでいるものがあるかもしれず、ある日、驚きのヒズボラ侵入という可能性もまったく否定できないということである。

しかし、そこはころんでもただ起きないイスラエルである。ガザで学んだあらゆるハイテクとその組み合わせを駆使しながら、新たなトンネル対策技術の実践研究もすすめているとのこと。

3)トンネル摘発のかかる費用は厖大


いうもまでもないことだが、トンネルを掘る以上に、それを摘発することには、厖大な資金が必要になる。いわば、イスラエルは、ヒズボラに延々と終わりのないトンネル摘発に大金を使わされているということである。

その割に、トンネルから考えられる実際の被害はそれに見合うかどうかといえば、これは論議である。

たとえば、トンネルから誘拐されるイスラエル人があったとしても1人、2人であろう。とはいえ、ハマスのトンネルから誘拐されたシャリート兵士一人のために、テロリスト1000人が釈放され、その釈放者によって多くのテロ事件が発生しているということもあるので、大きな被害を防ぐということも考えられる。

いろいろ考えれば、数人の閣僚が言うように、最終的にはレバノンへ踏み込むしかないだろうとバラク博士は語る。

<トンネル摘発がもたらすもの>


トンネル摘発がきっかけとなり、結局、イスラエルがレバノンへ踏みこまざるをえなくなることもあるとしたら、一部の閣僚たちが言うように、誘導ミサイルがまだヒズボラに十分配備されていない今のうちがよいのかもしれない。

しかし、もしそうなれば、第三次レバノン戦争ということになり、イスラエル全国にミサイルの雨がふりそそぐことになる。ヒズボラは、イスラエル全土を標的に入れていると、今回も脅迫している。

さらに、イスラエルとヒズボラが戦争になれば、今はすぐ隣のシリアにイランとロシアがいる。限りなく大戦争になってしまう可能性は否定できない。

今回、イスラエルが、大きなリスクを知りながらも、トンネル摘発に踏み切ったのは、それらのトンネルが、イスラエル領内に入り込み、市民たちが、家の下で掘削の音を聞いているところまで来たからである。

一方で、北の盾作戦開始が、ネタニャフ首相に警察から汚職有罪の勧告が出た翌日、というタイミングであったことから、イスラエル国内では、ネタニヤフ首相が、前からあった北部トンネル問題を今、利用したのではと皮肉る人々もいる。

いずれにしても、サイは投げられたわけである。ただ北の盾作戦については、イスラエルが、先手を打ってトンネルを摘発できたと喜んでばかりはいられないということは知っておいたほうがよいだろう。